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不動産特化型ウェブ会社サービシンクが仕掛けるチャットツールという次の一手 - (page 2)

加納恵 (編集部)2019年08月20日 08時30分
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ビッグデータとAIは今始めないと間に合わない

――ダウンロードの促進は営業担当者からの口頭のみですか。

 窓口にPOPをおいてもらって、そのQRコードからアクセスできるようにしています。しかしお客様以上に大変なのは実は不動産会社の方にこのツールを理解してもらうことですね。

 先程のお話に戻るような感じになりますが、こうした新しいツールを理解してもらうのは本当に大変です。不動産会社の方には電話、対面の営業で成約に結びつけてきた実績がありますから、新しいツールは不要と考えるのも当然だと思います。

 ただ、2000年頃から本格化したメール、インターネット、ウェブサイトはツールでした。ツールは導入すればいいだけですから、他社の動きを見ながら遅れないように導入すればよかった。しかし、今のビッグデータやAIはそれでは間に合いません。

 ビッグデータにはデータをデジタル化し、AIには学習するための時間が必要です。多くの不動産会社は顧客を紙で管理していますから、まずデジタル化する時間が必要です。投資としてやるのであれば、今やっておかなければ5年後に役立ちません。AIが本格導入されれば、導入している会社としていない会社の差は急激に広がります。5年後から始めても、もはや追いつけないでしょう。

「ビッグデータにはデータをデジタル化し、AIには学習するための時間が必要。5年後から始めても、もはや追いつけないでしょう」
「ビッグデータにはデータをデジタル化し、AIには学習するための時間が必要。5年後から始めても、もはや追いつけないでしょう」

――不動産仲介会社の中には、数年で仲介事業から手を引くケースもありますから、中長期的視点でのお話が響きづらい傾向がありますね。

 確かにそうしたケースもありますが、今不動産賃貸業界は潮目が変わるタイミングだと見ています。人口が減少し、過疎地でなくても家あまりの時代が始まろうとしています。そうした時に、顧客満足度の向上は不動産会社にとっての強みになります。

 私は不動産会社にとっても「生涯顧客の育成」が必要だと思っています。不動産は売買であれば生涯一度という方が非常に多いですし、賃貸でも住む場所が変わってしまえば、不動産会社とのお付き合いは途絶えてしまいます。

 しかし、契約時の満足度を上げられる仲介不動産会社があれば、次に引っ越す時もその会社に依頼をしたいという人が出てくるでしょう。また、居室内に不具合が生じた時、電話であればかけられない、つながらないといったことから、入居者の不満につながりますが、今後、管理会社が入居者の問い合わせへのレスポンスの速さや問題解決が的確であれば、その管理物件自体が「住みやすい物件だ」という評価につながり、退去の食い止め要素になるはずです。

 そうした顧客への取り組みを積み重ねることで、次もこの仲介会社に頼みたい、この管理会社の物件に入りたいという思いが浸透すれば、不動産業界でもあっても生涯顧客の育成は可能です。

 アトリクでは次の戦略として、仲介会社の業務がクロージングした後に、管理会社に顧客を引き継げるようにしたいと考えています。加えてチャットのやりとりをデータ解析して、一定の内容であれば一時回答できるような仕組みを整えていきます。

 そこまでできると、管理会社は入居者の契約期間を把握でき、更新時期が近づいたタイミングで、新しい物件をご案内できるかもしれない。そういう取り組みによって、不動産会社であっても生涯顧客は作れるようになります。そういう世界観を作り上げたいと思っています。

――確かに、物件が決まった後まで顧客とつながるのは難しい業界ですよね。

 それがもったいないと思うんですよ。生涯顧客をきちんとつかめれば、賃貸の契約以外の広がりもできるかもしれません。不動産テックは目に見えづらい効果が多いため、なかなか導入に踏み切っていただけないケースもあると思いますが、その部分を変えて行きたいと思っています。

――ウェブサイトの作成から業務支援、さらには将来のことまで考えて提案できるのはサービシンクならではですね。

 不動産業界に特化してきた強みだと思っています。業法の問題など、専門用語や業界の人でないとわかりづらい案件も、それこそ空気を吸うようにご提案できることが私たちの基本性能だと思っています。逆にそこがなければ意味がない。

 そうした基本性能に加えて、不動産会社の方がITで困っている部分をなにかしらお手伝していきたい。それがサービシンクの姿勢です。

インタビュアー

赤木正幸

リマールエステート 代表取締役社長CEO

森ビルJリートの投資開発部長として不動産売買とIR業務を統括するとともに、地方拠点Jリートの上場に参画。太陽光パネルメーカーCFO、三菱商事合弁の太陽光ファンド運用会社CEOを歴任。クロージング実績は不動産や太陽光等にて3500億円以上。2016年に不動産テックに関するシステム開発やコンサル事業等を行なうリマールエステートを起業。日本初の不動産テック業界マップを発表するとともに、不動産テックに関するセミナー等を開催するほか、不動産会社やIT企業に対してコンサルティングを実施。自社においても不動産売買支援クラウド「キマール」を展開。2018年、不動産テック協会の代表理事に就任。早稲田大学法学部を卒業後、政治学修士、経営学修士を取得。コロンビア大学院(CIPA)、ニューヨーク大学院(NYUW)にて客員研究員を歴任。 

 

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