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シャープは、成長戦略に向けて、新たな体制づくりを開始している。Dynabookの買収や、海外事業への投資拡大のほか、AIoT Worldの実現に向けて、4つの事業領域に再編する考えも示す。
そして、2020年度からは、新たな中期経営計画がスタートし、現在、その策定に向けた準備を進めているところだ。だが、シャープ 代表取締役会長兼社長の戴正呉氏は、「次期中期経営計画は、次期社長にやってもらうことになる」と明言する。この姿勢を明らかにしたのは今回のインタビューが初めてだ。そして、「シャープの社長を退任した後は、休みたい」とも語る。後編となる今回は、次期中期経営計画の基本的な考え方、次期社長の条件などにも触れながら、戴会長兼社長の人となりにも迫った。
Dynabookは、世界初のノートPCを開発した企業であり、今でもすばらしい技術を持った会社です。私がDynabookの経営において大切にしているのは、あくまでも独立した企業として事業を進めてもらうという点です。たまに、私が経営の指導を行うことがありますが、私がDynabookの本社を訪れたのは、社名をDynabookにする前に1度、社名がDynabookになったあとに1度のあわせて2度だけです。
Dynabookの幹部が中心になって再建に取り組んでいます。実際、2018年10月にシャープの傘下でスタートし、わずか3カ月で黒字化することができました。Dynabookの上場は、自主経営体制にすること、自ら資金を獲得し、事業拡大できる体質にすることが目的です。シャープが自分で稼いで、投資できるようになったのと同様に、Dynabookも自分で稼いで、自分で投資ができることを目指します。そうすれば、M&Aをやりたいという場合にも、自分たちの判断で、スピード感を持ってできるようになります。
私は、東証一部への復帰によってシャープの復活を宣言しましたが、Dynabookの復活も、東証一部上場におきたいと考えています。その目標に向けてがんばってもらいたい。
そして、先にも触れましたが、Dynabookは、シャープが弱かったITの部分を担うことになります。
シャープは、AIoT Worldによって、世界を変えようと考えています。そのためには、ITが必要です。7月1日から、事業推進体制を「Smart Business」、「8K Ecosystem」、「ICT」の3つの事業グループに再編しましたが、その中で、新設したICTグループでは、Dynabook、携帯(スマホ)、ITクラウド、ロボホンが1つのグループになります。私は、2016年以降、メインフレームを廃棄して、データセンターを自前で作り、シャープのクラウド環境を構築しました。これをAIoT Worldを実現するためのプラットフォームとして活用していきます。
AIoT Worldは、白物家電やテレビ、健康機器、HEMSといった「つながる家電」と、スマホ、ロボホン、複合機、「BIGPAD」などの自社製品、あるいはドアホンや宅配ボックス、UTM(Unified Threat Management)、オフィス用機器といった他社の機器も、堺データセンターに接続させることができます。この堺データセンターが、AIoTのプラットフォームとなるわけです。その上で「COCORO OFFICEサービス」「COCORO HOMEサービス」を提供し、さらに、異業種企業が提供する各種サービスも利用できるようになります。
そして、AIoT Worldの実現に向けて、これらを4つの事業領域に再編します。1つは、AIoT機器の拡大を行う「AIoT機器事業」、2つめは、会員向けサイトの「COCORO MEMBERS」の拡大や、魅力あるサービス、ソリューションを創出する「COCORO HOMEサービス事業」。そして、小規模事業者をターゲットとしたサービス、ソリューションを展開する「COCORO OFFICEサービス事業」と、AIoTプラットフォームの付加価値向上と、パートナー企業とのアライアンスの拡大による「AIoTプラットフォーム事業」の4つです。これらの体制で何をするのかといったことを、10月には正式に発表する予定です。
――これは、横串型の組織に再編するということでしょうか。これまでのシャープは、テレビの会社、家電の会社、あるいは液晶パネルの会社でした。ご指摘のように、新たな組織は、縦割りでなく、横でつながり、ソリューションを提供することを目指します。
AIoT機器事業は、すでに売上げや収益を生む柱となっていますが、サービス、プラットフォームソリューションといった事業は、これからの領域です。機器事業だけでなく、すべての組織から、売上げ、利益を創出することを目指します。そのためには、まだ人材が足りません。必要な人材を育てたり、積極的に採用していく必要があります。
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