ひとことでいえば、2010年頃の強いシャープを取り戻したいということです。SDPを子会社化すれば、シャープが推進している8K+5Gエコシステムの競争力強化につなげることができます。今のSDPでは、IGZOプロセスを使えません。しかし、シャープに取り戻したら、SDPでもIGZOパネルを生産し、競争力を取り戻すことができます。私は、シャープの社長になってから、2年半に渡って、SDPには関与しませんでしたが、2019年1月から関与しはじめて、約半年間にわたって事業改革を進めてきました。改革はまだ進めることができると考えています。しかし、シャープに取り戻したいと思っていても、株主の意向、第三者の評価、独禁法の問題もあり、簡単にはいきません。私のわがままだけではどうにもなりません。
私は、これまでの3年間は、「転換」の3年間と位置づけました。今は事業を変革するための3年間であり、それは私が責任をもってやります。一方で、2020年度からの3年間は、次の100年に向けた準備の3年間となります。その中期経営計画は、次期社長から発表してもらうことになります。そして、次期中期経営計画は、次期社長がやることになります。私はやりません。
――次期社長の条件はなんですか。シャープは厳しい環境にあります。その中で経営を行うというプレッシャーに耐えられる人材が必要です。私も社長に就任したときには、大変なプレッシャーでした。まだなにもしていないのに批判の記事もたくさんでました(笑)。こうしたプレッシャーにも耐えられなくてはなりません。
2つめには、広い事業領域を経験していることです。シャープの事業領域は、白物家電、テレビ、パネル、半導体、太陽光発電と広いため、これらの領域における経験がなくてはいけません。3つめには、鴻海とのシナジーを生むことができる人であること。これも大切です。鴻海のいいところをシャープに生かすことができるということです。
そして、最後の条件が一番難しいかもしれませんが、創業者の意識を自らが持っているということです。日本の企業が強かった30年以上前には、日本の経営者の多くが創業者でした。しかし、創業者が亡くなったり、バトンを渡したりした結果、サラリーマン社長ばかりになってしまいました。創業者の意識を持った人もいなくなってしまいました。
日本の企業は休みが多い。もちろん休暇を取ることは大切です。しかし、経営者は365日休みがなくて当たり前です。経営者には責任があります。休みの日だからといって、スマホを切ってしまうなんてことはあり得ません。また、日本が祝日だからといって、欧米、中国、ASEANの社員とのミーティングをキャンセルするといったこともあり得ません。
シャープの社長は、日本の中だけでビジネスをしている会社ではなく、グローバルでビジネスをやっている会社です。その会社の社長であれば、日本の祝日だからといって休むわけにはいきません。先日の海の日(7月15日)も、ASEANのチームがこの日にミーティングをやりたいということで、私を含めて、関係する幹部は全員が出席しました。私もこの日は午前8時からインドネシアのチームと緊急案件でテレビ会議を行い、続けて、グローバルのテレビ事業の会議を行い、中国のテレビ事業、ASEANの経営会議などが入り、朝から夜までスケジュールがぎっしりでしたよ。しかも、それを台湾からやっていましたので、時差の関係で、現地時間では午前7時から会議が始まりました。シャープの創業者である早川徳次さんは、土曜日、日曜日はしっかり休んでいたと思いますか? そんなことはありません。私も同じです。
シャープの責任はすべて私が持ちます。同様に、私の後継者は、創業者の意識を持った人でなくてはいけません。
――それに合致する人は見つかっていますか。難しいですね。アドバイザーを使って探しているところです。
――ちなみに、台湾総統選の国民党予備選挙で、鴻海精密工業の郭台銘(テリー・ゴー)前董事長が敗れました。これはシャープの経営に対してどんな影響を及ぼしますか。まったく影響はありません。シャープは、私が中心になって、経営改革を進めてきました。間もなく3年になりますが、大阪・堺のシャープ本社に、郭前董事長が訪れたのは一度しかありません。そして、今後、シャープのアドバイザーとして関与することもありません。
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