「私の後継者は創業者意識を持つ人に」--シャープ戴会長兼社長ロングインタビュー後編 - (page 2)

2020年からの中期経営計画「私はやらない」、次期社長に必要な4つの条件

――テレビ向け大型ディスプレイなどを生産する堺ディスプレイプロダクト(SDP)の子会社化についても検討していますが、この狙いはなんですか。

 ひとことでいえば、2010年頃の強いシャープを取り戻したいということです。SDPを子会社化すれば、シャープが推進している8K+5Gエコシステムの競争力強化につなげることができます。今のSDPでは、IGZOプロセスを使えません。しかし、シャープに取り戻したら、SDPでもIGZOパネルを生産し、競争力を取り戻すことができます。私は、シャープの社長になってから、2年半に渡って、SDPには関与しませんでしたが、2019年1月から関与しはじめて、約半年間にわたって事業改革を進めてきました。改革はまだ進めることができると考えています。しかし、シャープに取り戻したいと思っていても、株主の意向、第三者の評価、独禁法の問題もあり、簡単にはいきません。私のわがままだけではどうにもなりません。

堺ディスプレイプロダクト(SDP)があるグリーンフロント堺
堺ディスプレイプロダクト(SDP)があるグリーンフロント堺
――次期中期経営計画が2020年度から始まります。その基本的な考え方はどうなりますか。

 私は、これまでの3年間は、「転換」の3年間と位置づけました。今は事業を変革するための3年間であり、それは私が責任をもってやります。一方で、2020年度からの3年間は、次の100年に向けた準備の3年間となります。その中期経営計画は、次期社長から発表してもらうことになります。そして、次期中期経営計画は、次期社長がやることになります。私はやりません。

――次期社長の条件はなんですか。

 シャープは厳しい環境にあります。その中で経営を行うというプレッシャーに耐えられる人材が必要です。私も社長に就任したときには、大変なプレッシャーでした。まだなにもしていないのに批判の記事もたくさんでました(笑)。こうしたプレッシャーにも耐えられなくてはなりません。

 2つめには、広い事業領域を経験していることです。シャープの事業領域は、白物家電、テレビ、パネル、半導体、太陽光発電と広いため、これらの領域における経験がなくてはいけません。3つめには、鴻海とのシナジーを生むことができる人であること。これも大切です。鴻海のいいところをシャープに生かすことができるということです。

 そして、最後の条件が一番難しいかもしれませんが、創業者の意識を自らが持っているということです。日本の企業が強かった30年以上前には、日本の経営者の多くが創業者でした。しかし、創業者が亡くなったり、バトンを渡したりした結果、サラリーマン社長ばかりになってしまいました。創業者の意識を持った人もいなくなってしまいました。

 日本の企業は休みが多い。もちろん休暇を取ることは大切です。しかし、経営者は365日休みがなくて当たり前です。経営者には責任があります。休みの日だからといって、スマホを切ってしまうなんてことはあり得ません。また、日本が祝日だからといって、欧米、中国、ASEANの社員とのミーティングをキャンセルするといったこともあり得ません。

 シャープの社長は、日本の中だけでビジネスをしている会社ではなく、グローバルでビジネスをやっている会社です。その会社の社長であれば、日本の祝日だからといって休むわけにはいきません。先日の海の日(7月15日)も、ASEANのチームがこの日にミーティングをやりたいということで、私を含めて、関係する幹部は全員が出席しました。私もこの日は午前8時からインドネシアのチームと緊急案件でテレビ会議を行い、続けて、グローバルのテレビ事業の会議を行い、中国のテレビ事業、ASEANの経営会議などが入り、朝から夜までスケジュールがぎっしりでしたよ。しかも、それを台湾からやっていましたので、時差の関係で、現地時間では午前7時から会議が始まりました。シャープの創業者である早川徳次さんは、土曜日、日曜日はしっかり休んでいたと思いますか? そんなことはありません。私も同じです。

 シャープの責任はすべて私が持ちます。同様に、私の後継者は、創業者の意識を持った人でなくてはいけません。

――それに合致する人は見つかっていますか。

 難しいですね。アドバイザーを使って探しているところです。

――ちなみに、台湾総統選の国民党予備選挙で、鴻海精密工業の郭台銘(テリー・ゴー)前董事長が敗れました。これはシャープの経営に対してどんな影響を及ぼしますか。

 まったく影響はありません。シャープは、私が中心になって、経営改革を進めてきました。間もなく3年になりますが、大阪・堺のシャープ本社に、郭前董事長が訪れたのは一度しかありません。そして、今後、シャープのアドバイザーとして関与することもありません。

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