シャープ戴社長が発信した「プラス経営」とは--新たな価値、事業を生み出す足し算経営

小型8Kビデオカメラは年内をめど、5Gスマホは2020年春に商品化を予定

 シャープの代表取締役会長兼社長である戴正呉氏は7月25日、社員を対象にしたメッセージを、社内イントラネットを通じて発信した。

 8月には、社長就任から3年を経過する戴会長兼社長が社員に送った今回のメッセージのタイトルは、「“プラス経営”の発想で次々と新たな価値を創出し、事業変革を加速しよう」と題したものになった。

 メッセージの冒頭には6月25日に、大阪府堺市のシャープ本社において、第125期定時株主総会を開催したことに触れ、「出席いただいた多くの株主の方々から、『8K+5Gについて、わかりやすく説明してもらえて良かった』、『シャープのさまざまな最先端技術を見ることができ大変有意義であった』などと好評をいただいた一方で、『AIoTで、どのように生活が豊かになるのかよくわからなかった』といった意見もあった」とし、「『8K+5G』と『AIoT』は、シャープの事業ビジョンである。つまり、私たちが目指す未来そのものであり、その価値をしっかりとお客様に伝えなくてはならない。その上で、事業化への道筋を、ひとつひとつ具体化していくことが極めて重要である。これがシャープの飛躍的成長の鍵を握るB2B事業の拡大にもつながる。一日も早く『8K+5G』と『AIoT』の事業を本格的させるとともに、2021年度までに商品事業におけるB2B事業の割合を、現在の約35%から50%程度までに引き上げたい」との姿勢を示した。

 また、「こうした取り組みを加速すべく、7月13日と20日に『8K+5G Ecosystem』と『AIoT World』をテーマにした勉強会を開催した。ここでは、各事業本部から事業化に向けた具体的な取り組みについて発表してもらい、堺ショールームにおけるAIoTの展示の見直しについても紹介してもらった。今回のメッセージでは、そのポイントについて話す」として、まずは8K+5G EcosystemとAIoT World」について説明する内容となった。

 8K+5G Ecosystemでは、「このエコシステムを構築するためには、シャープが強みとする8K+5G関連の最先端技術を核に、エコシステムを担う多様なパートナーとの協業による応用展開を進め、新たな事業の芽を創出していかなくてはならない。この役割は、研究開発事業本部傘下の『8K LAB』が担っており、8K映像の画像圧縮技術やアップコンバート/ダウンコンバート技術、5G/LTE通信技術、IP伝送技術、高精度空間計測技術など、新たに開発した技術を強みとすることができる。ここでは、ビジネスソリューション事業本部とともに鉄道事業者と連携して、電車の検査システムの開発に取り組むなど、新規事業の創出を進めている事例がある。また、各事業本部では、本格的な事業拡大に向けて、より具体的な取り組みが進展している」としていくつかの事例を紹介した。

 ビジネスソリューション事業本部では、放送分野における8Kでの事業基盤確立に向けて、パートナーとの協業によって、シャープに無い技術や販路を補完するための具体的な検討および交渉が進んでいること、現在開発中の小型8Kビデオカメラについても年内を目途に商品化する予定であること、スポーツ分野おいては、スタジアムへの8Kモニターや8Kカメラの導入を皮切りに、スポーツチーム向けソリューションやセキュリティソリューション、さらには、スタジアム内モニターへの映像配信やパブリックビューイングにより、スポーツ観戦の楽しみをより一層高める「多様な視点からの8K映像」を表示する配信ソリューションの提案を進めていることを紹介した。

 また、スマート/グローバルTVシステム事業本部では、AQUOS 8Kを、B2C向けにグローバル展開するとともに、B2B分野への展開も加速すべく、ビジネスソリューション事業本部とも連携し、医療や設計、デザインなど、特定の顧客ニーズに合わせて特別にカスタマイズした専用8Kモニターの開発にも取り組んでいることを紹介。通信事業本部では、2020年春に、B2C向けに5Gスマートフォンの商品化を予定。続いて、B2B分野への展開も検討していることにも言及し、「B2B分野では、5Gルーターの商品化を検討するとともに、ネットワーク事業者と連携し、イベント会場や工場などの特定分野における5Gネットワークソリューションの提供を目指している」とした。

 ここでは「Dynabook」の取り組みにも触れ、「映像編集や広告制作、CAD設計など、さまざまな分野で8Kを活用できる環境を早期に構築すべく、8K PCの開発を進めており、2019年度中を目標に発売する予定である。さらに、5G内蔵PCやタブレットの開発、独自のエッジコンピューティングデバイスである「dynaEdge」を活用した工場現場における8K+5Gソリューションの構築にも取り組んでいる」と述べた。

 そして、「今後は、こうした各事業本部の取り組みを、いま一度、全社視点でブラッシュアップするとともに、さらなる議論を積み重ね、One SHARPでの『8K+5G Ecosystem戦略』を練り上げていきたいと考えている」と語った。

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