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夏野剛氏は、なぜ「IT専門校」を作るのか--バンタンテックフォードアカデミー設立の狙い - (page 2)

藤井涼 (編集部) 阿久津良和2019年07月12日 08時00分
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日本の“文系・理系”システムは「冗談じゃない」

——現役のエンジニアの方は日々の業務もあると思いますが、講師と両立できるのでしょうか。

 実のところエンジニアも人に教えることで、より成長できると思っているんです。特にコミュニケーションですね。エンジニアからPM(プロジェクトマネージャー)へ進むために欠かせない能力ですが、講師という役割が大きく役立つでしょう。エンジニアとして非常に優秀ながらも、PMになった途端、パフォーマンスを発揮できない方は少なくありません。エンジニアの教育につながると思っています。

講師となるエンジニアの一例
講師となるエンジニアの一例

 このようにエンジニアとPMの大きな境は日本に限った話ではありません。ただ、日本だと、早いうちから文系・理系で分けることが影響しているかもしれませんね。米国では大学の学部レベルで文系・理系はあまり分かれておらず、専門性が生じるのは大学院からです。

 日本はどちらかと言えば、コミュニケーションに長けた方は文系に進む変な風潮がありますが、コミュニケーション能力と文系・理系のシステムはまったく関係ないのに、高校在籍中から分けるのは良くないと思います。あくまでも私見ですが、あのシステムが影響を与えているのだと勝手に思っています。

 国語ができないと理系に進むとか、英語が苦手だから理系に進むとか冗談じゃありません。言葉を使いこなせなければ理系だって無理でしょう。その上で言えるのは、「やりたいことのために必要な勉強をする」という仕組みに変えていかないと、エンジニアとPMの溝は埋まらないということです。

——どのような学生に入学してほしいですか。また、少し気が早いですが、卒業生にはどのようなキャリアを歩んでほしいですか。

 高校卒業後の進路に、大学ではなく専門学校を選択した方は、「早く社会に出たい、早く腕試しをしたい」と考える方が多いと思います。バンタンテックフォードアカデミーはITの最先端領域で勝負していくための「巣立ちの場」だと思っています。その意味で、他がダメだったからバンタンではなく、勝負したい方にぜひ来てほしいですね。勝負といっても命を失うわけではありませんし(笑)、やる気が一番大事です。

 (卒業生のキャリアのイメージについて)それを我々が持つべきではないと思っています。次々とIT企業が登場する昨今、入学時に憧れたところよりも優れた企業が登場することもあるでしょう。また、在学中にエンジニアや経営者の方々と出会うことで、新たな発見が必ずあります。もちろん就職先を斡旋するのは簡単ですし、今後もエンジニアは引く手あまたですから、あまり心配していません。

 ただ、既存の大企業ほどエンジニアを雇用すべきだとは思っています。たとえば情報システム部門の多くはコーディング経験が少なく、IT商材の発注・管理が主な仕事でした。IT産業は全産業のインフラだと考えているので、(卒業生には)IT企業以外の選択肢にも目を向けてほしいですね。生徒たちの30年後は、今ある大企業の半分はなくなるのではないかと思います。大手銀行も合併を重ねて行名が残っていないケースは枚挙に暇がありません。どのみち、大企業に就職して一生安泰という時代は終わりました。スキルを身に付けることが重要です。

“大卒”という肩書きの重要性は減っている

——バンタンテックフォードアカデミーもそうですが、N高や堀江貴文氏が立ち上げた“行動できる人材育成”を目指す「ゼロ高」など、新たな教育の形を提案する学校も増えています。この流れをどう見ていますか。

 高校と専門学校は同列に語れません。進学率で見ると高校卒業率は90数パーセントに達しますが、既存高校の枠組みでは、どうしても入りにくい方もいます。その受け皿として多様なオプションが存在することは良いことでしょう。枠にハマりにくいという意味では、プロのスポーツ選手を目指すケースも含まれますが、他方で集団社会生活を避けたい方は一定数存在し、彼・彼女らの中にも能力を秘めている方々が存在します。そのような方々に選択肢を提示し、バンタンテックフォードアカデミーのような存在がチャンスを得られるきっかけとなるでしょう。

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 最近では、即戦力となりうる人材育成を目指す専門職大学も登場していますが、専門学校との差別化という観点では不確実になりつつあります。たとえば、上場企業の株主総会などでは、役員の経歴に卒業大学は書かれていません。もちろん就職活動時は重視されますが、今の日本社会では“大卒”という肩書きの重要性は減少しつつあります。もちろん入社以降のキャリア形成に関しても同様でしょう。

 進学率で見ると現在は68%ですから、「大学卒」と言いたい方は専門職大学も選択肢の1つですが、高度なスキルを身に付けたいのであれば、専門学校の方が良いと思っています。たとえば、伊藤穣一氏は高校卒業後に渡米し、マサチューセッツ工科大学教授・MITメディアラボ所長を務めてきました。彼は2018年7月に慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科より博士号を授与しましたが、学士・修士を持たない博士号を受領したのは初めてです。

——N高からバンタンテックフォードアカデミーへ進学する生徒も出てくるかもしれませんね。

 そういう形もあると思います。N高から大学や専門学校に進学する方もいれば、そのまま就職するケースもあり得るでしょう。いまN高の進学決定率は約78パーセントですが、これを全日制高校並の90パーセント以上まで引き上げたいと思っています。バンタンテックフォードアカデミーができることで、(N高の生徒たちにとって)1つのオプションが増えると思います。

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