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フェイスブック ジャパン長谷川代表が語る「退任の真意」--独占ロングインタビュー

藤井涼 (編集部) 日沼諭史2019年07月08日 09時00分
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 フェイスブック ジャパンの代表取締役である長谷川晋氏が、2019年8月末をもって退任する。2015年に代表に就任してから約3年半。並行してフォトSNSのInstagramとVRデバイスのOculusを本格的に日本でも展開していく一方で、SNS「Facebook」では個人情報の不正使用が発覚するという深刻な問題にも直面した。

 日本では、Facebookが日常的に使われるSNSとしてしっかり根付いた印象もあるこの3~4年だが、順調に事業が成長し続けているこのタイミングで、なぜ退任という決断に至ったのか。今後の身の振り方も含め、長谷川氏が胸の内を語った。

フェイスブック ジャパンの代表取締役である長谷川晋氏
フェイスブック ジャパンの代表取締役である長谷川晋氏

辞めるのであれば「ベストタイミング」

――長谷川さんが退任すると発表されたのが2019年3月。代表に就任されてからの期間でいうと3年半ですね。実際に辞められるまでまだ時間もありますし、宣言するのがずいぶん早かったようにも思いますが、何か理由があったのでしょうか。

 そんなに深い理由はないのですが、早めにアナウンスすることで、クオリティを保ってバトンタッチしやすくなる面もあると思うので、早めに段取りをして退任するという形をとりました。フェイスブック ジャパンに入社したのは2015年10月で、2019年8月末に退任しますので、トータルで3年と11カ月。ほぼ4年になりますね。

――これまでの約3年半を振り返ってみていかがですか。

 いろいろなことがあって、全部思い出すのが難しいくらいですけど、ぱっと思いつくものだと、1つのマイルストーンだったフェイスブック ジャパンの10周年ですね。Facebook日本語版ができて10周年をみんなで祝ったのですが、Facebook本社からも副社長が来ましたし、日本でFacebookを活用していただいているコミュニティの皆さんに会いに行ったりもしました。

 たとえば、発達障害のお子様をもつ親御さんのコミュニティだったり、ランジョグというランニング・ジョギングのコミュニティ、日本の酒蔵と日本酒を盛り上げようとしている方々や、アクティブなシニアの皆さんなど、いろいろなコミュニティの皆さんと、その管理をしているコミュニティリーダーの皆さんにお会いしました。Facebookでいろいろな人がつながり、その人と人のつながりが、社会を一歩前に前進させるパワーを持っていることを肌感覚として実感できて、それはすごく思い入れ深い、印象に残る出来事になりました。

 あとは、ちょうど今まさに(取材時にオフィスで)やっていたのですが「フェイスバーサリー」というものがあります。「Facebook」と「Anniversary」の造語なんですが、Facebookでは入社すると1年ごとにみんなでお祝いする文化があって、会社からもバッジと勤続年数に合わせた風船が届きます。僕も1周年、2周年、3周年とみんなにお祝いしてもらいました。IT企業ということでスピードの早い会社ではあるのですが、そういう中でも一歩立ち止まってみんなでお祝いするというのは、うちの会社らしい、いい風習だなと。これも思い出深いですね。

――8月末に代表、そしてフェイスブック ジャパンからも離れるわけですが、今の率直な思いはやりきったという気持ちですか。それとも、やり残したこともあるのでしょうか。

 両方ありますね。手応えがあるなと思うものもあれば、逆に後ろ髪引かれるような思いをしたものもあります。

 やりきったものでいうと、1つはFacebook全般ですね。グローバルのミッションが2017年に「コミュニティを応援して、人と人がより身近になる世界を実現する」というものに変わったのですが、それに合わせてフェイスブック ジャパンでも、コミュニティやテクノロジーを使って日本固有のいろいろな課題を成長機会に変えられないか、ということに初めてちゃんと向き合いました。

 地方の自治体や地場企業、地域のコミュニティと一緒になって地方活性化に取り組んだり、超高齢化社会ではアクティブで元気なシニアが増えるので、そういう方たちをつないで社会の活力に変えようとか。あとは、今後も震災や有事に遭遇しうるので、コミュニティの力を使ってそこで発生する問題を解決していこうとか。そういうことをFacebookで始められたことには手応えを感じています。

 Facebookというサービス自体でいうと、月間のアクティブ利用者数が、私が入社した2015年時点が2500万で、直近が2600万です。なので、利用者自体が爆発的に増えたわけではないのですが、先ほど申し上げたようなコミュニティとの関わりができ、地方創生でもFacebookが活用されるようになったのは、すごく良かったなと思っています。

キャプション

 ほかにも、日本のFacebook上で募金キャンペーンの機能が使えるようになったり、仮想通貨への取り組みも始めたりと、Facebook自体がこれまで築きあげてきたベースにさまざまな機能が加わり、コミュニティの力でより大きな貢献ができることには、すごく手応えを感じていますし、これからも楽しみですね。

 フェイスブック ジャパンという会社についていうと、社員1人1人の成長や成功が会社の成長や成功につながって、それがまた個人のさらなる成長や成功の機会になる、みたいなサイクルが回っていくことを意識して組織作りをしてきました。

 その一環として、6カ月に1度「コーヒーチャット」といって、社員と1対1でキャリアや自分の成長などについて話をする機会を設けているんですが、これがある程度回り始めていて、いい感じになってきてるなと思います。1回限りだと、オープンな人もいれば、自分のことをあまり話さない人もいて濃淡が生まれるんですが、ずっとやり続けると徐々にそれが積み重なっていって、3回目くらいで意味が出てくる人もいます。そういうところに面白さがありますね。

 当然、会社というのはフェーズがあるので、どんどん変わっていかなきゃいけないんですが、社員からさまざまなフィードバックをもらって、それをしっかり理解しながら向き合って、会社自体や職場環境を良くしていく仕組みも、この3年半でずいぶんと整備できました。個人、会社ともに自走しながらどんどん進化していくという点では、割と手応えを感じているところです。

――日本ではここ数年でInstagramが急成長しましたね。

 私が就任した当時、Instagramの月間アクティブアカウント数は810万でした。2019年3月末時点でその数を3300万と発表させていただいたので、3年半ほどの間で4倍強になったんですね。

 Instagramの日本におけるコミュニティが急激に拡大していて、数だけでなく、2017年にはトレンド大賞と「インスタ映え」が流行語大賞に選ばれ、ダブル受賞させていただきました。1ソーシャルメディアプラットフォームとか、1メディアということではなく、日本における社会現象として、いろいろな方の生活の一部になっているのは、僕らとしてもすごく嬉しいです。

――逆にやり残したことは何でしょうか。

 オリンピックですね。2020年の東京オリンピック・パラリンピックは、ある意味では日本と世界がもう一度つながる、すごく大きなイベントだと思うんです。そこに対して、FacebookやInstagramのようなグローバルプラットフォームが果たす役割や貢献はすごく大きいと思いますし、そういうところで関わりを持ちたかったなとは正直思います。

 Instagramは確かに810万から3300万まで(月間アクティブアカウント数が)成長しましたが、日本でナンバーワンのプラットフォームやメディアになり得ると僕らは信じているので、その瞬間を自分自身も中にいて体験したかったなという思いもあります。それと僕らはこの3年半でビジネスもサービスもどんどん広がっていて、2020年にはオフィスを移転するんですね。移転をして会社として次のフェーズに行くという、非常に前向きなマイルストーンなのですが、そこでも本当は会社の中にいて、みんなと一緒にお祝いしたかったなという気持ちはあります。

 ただ、僕のようなポジションの人間は、割とその次の楽しみなこととか、追い風が見えているような時にしか辞められないとも思っています。ピンチな時や、いろいろなことを何とかしなきゃいけない時は、しんがりとして、最後の1人になっても残って、何とかしなきゃいけない立場だと思うんです。なので、自分自身も楽しみだと思えるものがたくさんある時こそが、辞めるのであればベストタイミングなのかな思い、こういう決断をしました。

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