「テレワーク=終日在宅勤務」「テレワーク=ゼロか100か」という誤解

ブイキューブ2019年07月03日 12時00分

 政府がテレワークの一斉実施を呼びかける「テレワーク・デイズ」が、2019年は7月22日から9月6日の期間で実施される。

 政府主導の取り組みとしてだけでなく、最近はテレワーク導入の有無が採用の成果に影響するなど「働きやすい環境」は企業にとって欠かせないキーワードになっている。政府は2020年までにテレワーク導入企業を2012年度比で3倍にする目標を掲げており、テレワークを導入していない会社は時代遅れだと思われる時代がやってくるかもしれない。一方で「どうやってテレワークを始めたらいいの?」と悩んでいる企業も多いのではないだろうか。

 このコラムでは「日本企業が陥りがちな、テレワークの3つの誤解」というテーマで全3回にわたり、テレワークに対する誤解や思い込みを解消することを通して、テレワークを始めて見るキッカケをお伝えする。

第1回:「テレワーク=終日在宅勤務」「テレワーク=ゼロか100か」という誤解
第2回:「テレワークはツールを入れれば始められる」という誤解
第3回:「テレワークは都心のビジネスマンのためのもの」という誤解

できることから取り入れてみるテレワーク

 第1回のテーマは「『テレワーク=終日在宅勤務』『テレワーク=ゼロか100か』という誤解」だ。

 求人でも「在宅勤務OK」という項目をよく見かけるなど、テレワーク=在宅勤務というイメージは根強くある。確かに、自宅で仕事をすれば通勤のストレスや時間を軽減できたり、時間に制約のある優秀な人材を確保できたりといった多くのメリットが挙げられる。しかし、自宅で終日仕事をするということに対しては「社員が本当にちゃんと働いているかわからない」とか、反対に「会社からきちんと評価されるのだろうか」など、心理的なハードルも生まれやすいようだ。会社によっては勤務状況をこまめに報告する必要があり、在宅勤務をする方が出社するより疲れる……なんていうケースもあるかもしれない。このような状況のままテレワークに取り組んでいても、本来の目的である生産性向上は望めないだろう。

 そこでまずは「テレワーク=終日在宅勤務」という誤解を解消し、できることから始めてみる方法をお勧めしたい。つまり「業務の一部だけをテレワークに切り替えてみる」という方法だ。

 例えば、「商談にウェブ会議を取り入れてみる」という方法。

 冒頭でも指摘したように「テレワーク=在宅勤務」というイメージは根強いが、これまで対面でしていた仕事を遠隔で実施する方法、つまり顧客のオフィスを訪問せずにウェブ会議で商談をすることも立派なテレワークになる。

 できる限り多くの顧客と対話し、価値のある提案をすることを求められる営業部門にとって、顧客と対話する時間は何よりも重要だろう。そこで全ての商談をいきなりテレワークに切り替えるのではなく、一部の商談にウェブ会議を取り入れてみる方法をおすすめしたい。例えば既存顧客のフォローや、移動が不要なウェブ会議であればスムーズに日程調整が進みそうな場合。また、部外からの同席が必要な打ち合わせでは、参加人数が増えるに従って往訪の日程調整が難航する傾向があることから、上長やSEだけ日程調整のハードルが下がるウェブ会議でオフィスから遠隔参加してサポートに入るという方法もある。最近ではそういったニーズに答えたオンライン営業専用のウェブ会議なども出てきている。

 商談にウェブ会議を取り入れると、移動時間を削減できるのはもちろんのこと、空いた時間でより多くの顧客と対話する時間を生みだすことが可能になる。顧客にとっても「日程調整がしやすくなる」「メールや電話では伝わらないけど、スピード重視で相談できる」といったメリットがあり、近年ではこうした手法がオンラインセールス、インサイドセールという新たなカテゴリとして普及してきていることから、顧客にウェブ会議を提案することを躊躇する必要もなくなってくるだろう。

 相手との関係性やタイミングを見ながら、以下のようなシーンで必要に応じて商談の一部をウェブ会議に切り替えてみるという選択肢を取り入れてみてはいかがだろうか。

シーン1:商談に向かうための移動が多い営業マン

 午前は丸の内のオフィスを出発して新宿の商談先へ。午後イチの社内会議のために帰社し、その後、横浜の商談先へ。夕方は、書類を整理するために再び丸の内のオフィスへ……。このケースでは移動だけで3時間を使っている。

 ここにウェブ会議での商談を取り入れると…。

 午前と午後の商談をいずれもウェブ会議で実施することによって、移動に使う予定だった午前の1時間は、例えば提案資料の作成に当てることができる。また、同じく移動に使う予定だった午後の2時間のうち1時間は、残業で対応しようと考えていた社内向けの書類作成に、もう1時間は別のウェブ会議商談に使うことができる。商談をウェブ会議にすることによって新たな商談の時間を生むだけでなく、残業時間の削減にも繋がる。

ウェブ会議の商談を入れた場合
ウェブ会議の商談を入れた場合

 次におすすめするのが、「1日の始まりと終わりに少しだけテレワークをしてみる」という方法だ。

 例えば「朝会だけ自宅から参加してみる」という方法。

 最近では時差ビズという言葉もあるように、通勤ラッシュの時間帯を避けて少し遅めに出社するという方法も知られるようになってきている。しかし、まだまだ「朝早く出社してなんぼ」の企業が多い日本では、単純に会社に行く時間を遅くすることに抵抗があるという人も多いだろう。そんな場合におすすめなのが「朝会だけ自宅から参加してみる」という方法だ。

シーン2:毎朝1時間かけて通勤している、とある営業部長

 例えば、自宅と会社のちょうど真ん中にある企業へ10時の往訪を予定しているとする。8時30分からの朝会に参加するためだけに片道1時間かけて一度出社する場合、7時30分に家を出て会社まで行き、9時30分の会議が終わり次第、通勤してきたルートを引き返す形で往訪先へ行くという時間の使い方になる。

 これをウェブ会議にすると…。

 9時からウェブ会議で社内会議に入り、10時に自宅を出発してそのまま往訪先へ。これまで通勤時間にあてていた8~9時の1時間は、提案書作成やメールチェック、家族との対話や保育園の送り迎えなどに活用することができ、業務効率化や家事への協力につなげられる。

シーン3:オフィスよりも往訪先の方が自宅に近い営業マン

 新宿本社の企業へ往訪し、17時30分に先方オフィスを出たAさん。丸ノ内の自社オフィスに帰社すると終業時刻の18時間際になり、19時から自宅近くで家族と外食の約束をしているため、ドアtoドアの移動時間を考慮して18時15分に退社……こんな時間の使い方をしている。

 ここにテレワークを取り入れて、直帰してみると……。

 17時30分に新宿でアポが終わり、新宿駅周辺にあるカフェへ。新宿から三鷹までは15分ほどで到着するので、家族との約束の時間まで、1時間以上仕事に集中できることになる。

無理にテレワークをする必要はない。「できることから始めてみる」が成功の鍵

 これらのシーンで大切なのは「できることからテレワークを始めてみる」という考え方だ。移動のムダを無くしたり、生産性を高めたりするためにテレワークを検討することが重要なのであり、オフィスに立ち寄って行うべき業務や理由があるのであれば、無理にテレワークをする必要はない。ブイキューブでも創業当初からウェブ会議システムの提供を事業軸としているが、対面に勝るコミュニケーションはないという考えを大切にしている。特に旧来からビジネスシーンにおいて間合いを読むことが重視されてきた日本では、オフィスでの雑談から派生するちょっとしたアイデアがビジネスにもたらすメリットを代替することはできないだろう。

 そのため「今週は必ず1日はテレワークをしよう」という考え方から出発するのではなく、「このスケジュールは、テレワークを取り入れれば効率が良くなるのではないか」といったシーンから、少しずつテレワークを取り入れることをお勧めしたい。

 今回は、ウェブ会議を利用するシーンを中心にご紹介した。しかし実は、ウェブ会議システムを導入するだけでテレワークができるかというとそうではない。次回は「『テレワークはツールを入れれば始められる』という誤解」というテーマを通して、テレワークに必要な4つの要素をお伝えする。

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