GoogleやFacebook、Appleといった大手テクノロジー企業各社はここ数年、自社の製品やサービスを障害者にとって利用しやすいものにする取り組みを大々的にアピールしている。これらの企業は、障害者コミュニティー向けの地図や、デバイス上のコンテンツを説明する画面読み上げ技術、写真の詳細な説明を共有するツールなどを提供してきた。こうした取り組みを紹介する動画を流すのが、Appleの「Worldwide Developers Conference」からFacebookの「F8」まで、さまざまなカンファレンスの基調講演の定番となっている。
Googleは5月に開催した開発者カンファレンス「Google I/O」で、人工知能(AI)と音声認識技術を利用して障害者の生活を楽にするいくつかの取り組みを披露した。Amazonは自社の製品やサービスの多くを画面読み上げ技術に対応させ、Netflixと同様に、番組の字幕も提供している。Netflixは、視覚障害のある視聴者を支援するため、音声による説明も番組や映画に追加するようになった。
「テクノロジーによって成し遂げられていることの中には、本当に素晴らしいものがいくつかある。今、テクノロジーが障害者のためにしていることほど素晴らしいことはないだろう」。そう語るのは、元ニューヨーク州知事で視覚障害を抱えるDavid Paterson氏だ。Paterson氏は、ウェブアクセシビリティー製品およびサービスを提供する企業AudioEyeのコンサルタントでもある。
とはいえ、多くのウェブサイトはアクセシビリティーに対応していない。つまり、障害者(視覚障害者や聴覚障害者、認知障害者を含む)が利用できるように設計やコーディングが行われていないということだ。ウェブ・コンテンツ・アクセシビリティー・ガイドライン(Web Content Accessibility Guidelines:WCAG)によると、サイトがアクセシビリティーに対応していると言えるには、内容を読み上げるソフトウェアに対応する、動画に字幕を表示する、ユーザーがキーボードコマンドで機能を操作できる、といった要素が必要だという。残念ながら、多くのサイトはそれらの条件を満たしていない。
法律事務所であるSeyfarth Shawのアクセシビリティーブログによると、2018年、ウェブサイトのアクセシビリティーをめぐる訴訟件数が前年の3倍近くに増えたという。TargetやDomino's Pizzaといった企業は、自社のサイトやアプリを全盲者が利用できるようにしていないとして訴えられた。
企業と公共の建物に障害者への対応を義務づける障害を持つアメリカ人法(ADA)が1990年に可決されたとき、不動産業界と建設業界は新しい基準を満たすために急ピッチで対応を進めた、とPaterson氏は話す。
「デジタルの世界、つまりウェブサイトやモバイルユーティリティーでは、そうした改善は実施されていない」(同氏)
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