ライドシェアサービスのUberが米国時間5月10日、ニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場した。2019年に最も期待の高かった新規株式公開(IPO)の1つだ。
上場初日は総じて低調な滑り出しとなった。初値42ドルでIPO価格の45ドルを下回った。IPO価格は、Uberが4月に米証券取引委員会(SEC)に提出した申請書類で示していた仮条件(44~50ドル)の下限に近い数字に設定されていた。終値は7.6%安の41.57ドル。終値に基づく時価総額は約765億ドルだった。大規模な数字ではあるが、1200億ドルという当初の予想を大きく下回り、株式公開前の評価額760億ドルとあまり変わらない結果となった。
さまざまな要因が今回の控えめな価格設定に影を落とした可能性があるとみられている。Uberのライバル企業であるLyftは、上場以来苦戦を強いられており、7日に発表した初の四半期決算報告は予想を下回る結果となった。
IPOを目前に控えた8日には、世界中のUberドライバーが路上で賃金について抗議活動を行った。
UberとLyftは、いずれもスマートフォンアプリによる配車サービスを提供しているが、それぞれ異なる事業を展開している。Uberは、フードデリバリーや空飛ぶタクシーなどなどの多様なサービスを展開するグローバル企業としてアピールしている。LyftはUberよりも小規模で、交通輸送サービスに注力している。
Uberは2009年に創業し、Ubercabとしてスマートフォンから一般車を呼ぶことのできるサービスを開始した。数年後に社名をUberへと変更し、2012年頃に今日の配車サービスに進出している。その後、自動運転車やオンデマンドのスクーターや自転車、駐車場や貨物トラックなどさまざまな形態でサービスの準備や展開を進めた。
Uberの共同創業者で前CEOのTravis Kalanick氏は、典型的なIT業界の寵児とみられており、過激な言動で注目を集めるような同氏のやり方は、同社が今日のような大企業に進化を遂げることに寄与した側面もある。一方で、アグレッシブで勝つためには手段を選ばないような同氏のパーソナリティーがUberの企業文化に影響していた。
2017年にはあらゆる問題がUberを苦境に陥れた。スキャンダルが相次ぎ、顧客やドライバーに損害を与えるとともに、同社の名声に傷が付いた。
「#DeleteUber(Uberアプリを削除しよう)」というソーシャルメディアキャンペーンが展開されたほか、Uberの元エンジニアが、セクハラを容認する同社の無秩序な企業文化の詳細を暴露するブログ記事を公開した。複数の訴訟が起き、Kalanick氏は辞任に追い込まれた。
Dara Khosrowshahi氏は、2017年8月にUberのCEOに就任した。Khosrowshahi氏は2019年の上場を目指すことを明らかにし、Uberの改革に着手した。ダイバーシティとインクルージョンに取り組む新しい役職を設けるなど、Uberの悪質な企業文化を刷新した。また、ソフトバンクによる出資の受け入れや、自動運転技術めぐるWaymoとの訴訟の和解などを実現した。
Uberは上場企業となったが、依然として深刻な問題を抱えている。最も懸念されるのは、これまでに黒字を達成しておらず、見通しも明るくないことだ。S-1申請書の中で、2018年の売上高は前年比42%増の113億ドルだったとしている。それでも2018年に、収益性を示す指標であるEBITDAで18億ドルの損失を計上している。
同社は、申請書で「近い将来、営業経費は大きく増加する見通しだ」とし、「黒字化を達成できない可能性がある」と説明している。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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