完全ワイヤレスイヤホンは2016年から大きく発展し始め、Appleの「AirPods」はその象徴的な存在になった。ニューヨーク市内、そして筆者の毎日の通勤経路を見ればよく分かる。2016年末、AirPodsを着けて通勤しているのは、長らく、筆者ひとりだった。今や、誰でも着けているようになった。初めてAirPodsを着け、さてどうしたものかと思ったのは今でも覚えている。写真は撮られるし、インターネットミームまで生まれた。メッセージも飛び交った。こんなのを着けてるところを見られるのはごめんだ、と。
それが、今ではどこでも見かけるようになった。ニューヨークでは、帽子と同じくらい当たり前の姿だ。
そして、いよいよ試用できる新型AirPodsが届き、開封してみたのだが、第1世代と違うところはすぐには分からなかった。着けた感じも全く普通だ。充電ケースの開き方も同じで、小型の磁石でくっついているふたを押し上げて開く。白いイヤホン本体を充電ケースから引き抜くところも変わらない。第1世代と第2世代のAirPodsを並べても、違いは分からないだろう。
この3年で、筆者の顔はAirPodsより大きく変わった。2016年と比べると体重が増えた(というか、減って、また増えた)し、メガネも新しくなって、少しだけ違う。今と昔の筆者の顔を見比べれば、似ている点もあるかもしれない。たぶん髪の毛は同じだ。白髪は増えているが。
AirPodsで変わった点は、どれも目に見えない部分で、しかもわずかずつだ。だが、米国の場合、価格は第1世代と同じなので、ワイヤレス充電ケースまで欲張らない限り、これまでの価値提案に付加価値が少し加わっただけというところだろう。今回の価値提案は、自分が使うデバイスは必ずしも一定ではないが、自分の身体と、自分が身に着けるものは不変的であるため、身に着けるAirPodsも使用感は大体同じで性能だけ少し向上させた、というようなことなのかもしれない。
だが、実際に使い始めてみると、新型の主な違いがはっきりしてきた。
本記事は、新しいAirPodsのレビューとして読んでほしい。ほぼ3年前に初めて使ってみたときと比べた、新しいAirPodsの印象と、筆者の使い方の変化は、以下のとおりだ。
音質は同じだが、接続が速くなった。わずかな違いだが、接続されると鳴るチャイム音が、より速く、より難なく鳴るようになったと感じられた。「Hey, Siri」を使えるが、ペンシルベニア駅(だろうと、どこだろうと)を歩きながら声を出すのは、どうにも間が抜けている。イヤホンに向かって話し始めたら、周囲の注目を浴びそうだ。
AirPodsのダブルタップもそのままで、次の曲にスキップする機能やSiri、一時停止などの機能にカスタマイズできる。ただ、音量調整をジェスチャーに設定することはできない。筆者としては最も望んでいる機能だ。いちいち「Hey, Siri、ボリューム下げて」と口にするのは、便利とは言えない。自動的に「Hey, Siri」が機能するのは、音声アシスタントがいつも控えているような気分で、結構なことだが、奇妙に感じることもある。筆者はたいてい、天気を調べるくらいだ。
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