「お化け屋敷には、きしむドアがあったり、不気味なモンスターがいたりするよね。僕は怖さを出すために、物語の音をうるさく、でもゆっくりと音が出るようにしたんだ」。ケンタッキー州ルイビルのブレッケンリッジフランクリン小学校に通う7歳のTariq Trowell君は、筆者にそう話してくれた。Tariq君は視覚障害を持っている。
Tariq君が語ってくれたのは、「Code Jumper」を使った感想だ。Code Jumperは、目が見えない、または視覚障害のある子供たちのためにMicrosoftが開発したコーディング言語である。「Python」や「C++」といったコンピュータベースのプログラミング言語と違って、Code Jumperはモジュール式の物理的な部品で構成される教育用ツールだ。生徒たちはそれらの部品をつなぎ合わせて、コードを作成することができる。
この特性によって、コーディングが触覚的で楽しい体験になる。Code Jumperはカスタマイズ性も高い。生徒は1つの音符や曲全体を再生したり、物語を伝えたり、あらかじめ設定されている音を使って独自の音を作ったりできる。再生速度や音の高さ、音量も制御することが可能だ。Tariq君はそれらの機能を使って、お化けの物語を創作した。
Tariq君の先生であるDeanna Lefanさんは、Code Jumperのようなテクノロジは、キャリア育成に役立つと言う。これは極めて重要なことだ。
ルイビルにある非営利組織で、点字教科書の製作や支援技術の開発を手がけているAmerican Printing House for the Blind(APH)の2017年の年次報告書によると、米国には、目が見えないまたは視覚障害のある子供が6万3357人いるという。コーネル大学の「Disability Statistics」(障害者統計)では、2016年の「American Community Survey」(米国コミュニティー調査)のデータに基づいて、目が見えないまたは視覚障害のある人のうち、学士号以上を取得するのはわずか15.7%だと推定している。つまり、この傾向が今後も続けば、この6万3000人以上の子供のうち、学士号以上を取得できるのは1万人以下ということになる。
APHは、その数値を向上させる手助けをしたいと考えている。APHはCode Jumperの配布を担当しており、Code Jumperが教室や個々の家庭に行き渡るように努めている。
APHのプレジデントを務めるCraig Meador氏は、次のように説明している。「問題なのは、目が見えないまたは視覚障害のある生徒たちが考慮されていないことだ。視覚能力がなければ、(コーディングを学習するときに)画面上に表示されるさまざまなアニメーションを見たり、ドラッグアンドドロップ操作をしたりすることができない」
現在、Lefanさんの教室には6人の生徒がいる。全員が、目が見えないか、または視覚障害を持っている。生徒たちは3人ずつ2組に分かれて2つの小さなテーブルに着き、Code Jumperを一緒に練習している。7月に正式リリース予定のCode Jumperを生徒たちが先行的に試すのは、これが2回目だ。
APHの職員やブレッケンリッジフランクリン小学校の教員、同校の校長を務めるCathy Bosemer氏がCode Jumperに取り組む子供たちを見守る。子供たちの熱意に明らかに感動した様子のBosemer氏は、「これは本当に素晴らしい。自分が今持っているもののありがたみを実感する」と話す。
目が見えない9歳のJoshua Lewis君が、Code Jumperの仕組みを教えてくれた。「ポッドをハブに接続して、ドーナツ型のつまみを回すんだよ。このつまみはドーナツみたいだ。丸くて平らなつまみで、回すと音を選べるよ」
それぞれのCode Jumperキットには、2つの主要な部品がある。ハブと複数のポッドだ。ハブは手のひらサイズの白いプラスチック製装置で、単三電池4本で動作する。大きな円形の青い再生ボタンとそれよりも若干小さい円形の青い停止ボタンが搭載されており、内蔵スピーカと音量コントロール、従来のヘッドホンジャックのように見える4つのポートも備える。
ポッドは、それよりも小さい白色のプラスチック製装置で、ポートを介してハブに接続する。各ポッドは1行のコードを表し、それぞれにポートが備わっているので、ユーザーはポッドがなくなるまで、追加のポッドを巨大なムカデのように連結することができる。
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