IESHILのようなウェブサービスは、一度ローンチした後に改善することもできる。であれば、まずは素早くサービスを立ち上げ、徐々に市場へとフィットさせるべきと芳賀氏は判断した。
そして、この段階に至ってもなお芳賀氏は「新規事業の最大の敵は社内」だったと振り返る。事業リスク、既存事業との兼ね合いなど、さまざまな不安の声を押さえ込むには、やはり経営者・決裁責任者の発言が欠かせない。経営者のコミットこそが、企業内で新規事業を立ち上げる上で最も重要なポイントだと芳賀氏は重ねて強調した。
新事業は立ち上げそのものがゴールではなく、営利企業である以上は収益を求めて行動していくことになる。しかし、その当初から黒字になるとは限らず、開発コストの償却も進めなければならない。
芳賀氏も、IESHILローンチ直後は自然と「赤字に向き合う」必要に迫られた。収益を上げる別部署の人員を前に、赤字を報告した。目先の収益化手段に食指を伸ばそうとしたこともあった。
しかし、ここでも開発ビジョンが行動のよりどころとなった。「どんなことがあっても常にゴールを向いていないと、おかしな事になっていく。メンバーが増える中で、1つ1つの施策は変わっていくべきだが、最終的なゴールだけは動かさない。○○達成のために今は我慢するなど、ビジョンをメンバーで共有しておくことが重要」(芳賀氏)
IESHILは3周年を迎え、当初7名でスタートしたチームは今や45名体制。それまでの少数精鋭体制から、新人教育も踏まえた組織作りにも注力する必要が出てきた。「昔はやりやすかった」「立ち上げメンバーは強かった」「組織課題ばかりになってしまった」といった不満が上がりかねない時期である。
芳賀氏もまた、自身が変わっていく必要性があると認める。「過去の栄光にすがるのではなく、今のメンバーでIESHILをどうしていくか、改めて考えていかないと更なる成長に繋がらない。だからこそ(目指すべきビジョンとしての)“旗”を間違えないようにしたい」と、ビジョンの重要性を改めて主張して講演を締めくくった。
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