IESHIL開発チームは、村上社長を筆頭に、芳賀氏も含めて6.5人(兼務のデザイナーを0.5人と換算)でスタートした。この初期構築にあたっては、「決裁者が近くにいることが本当に重要だった」と芳賀氏は話す。
「どんな企業でも、なんらかの企画のために予算決めなどをいくら進めても、決裁者が敵になった状態では何も進まなくなってしまう。これが企業内新規事業(と起業の違い)」と芳賀氏は指摘する。
IESHIL開発プロジェクトは、社長がそもそもの発起人であり、決裁者でもある。重要なミーティングへの同席や、プロトタイプ段階でのレビューも社長にしてもらう。「決裁者と一緒に事業を作り上げる風土」があってこそ、メンバーも全力を尽くせるという考えだ。
また、製品・サービスが最終的にどのようなかたちになるのか、メンバーで共有することも重要という。芳賀氏はかつてAmazon在籍時、「開発中の製品が完成したとき、どんなマスコミ記事になるか」を考え、言わば「未来新聞」「未来記事」を書いた。これをメンバー全員が定期的に実施することで、製品が果たしてどう市場に受け入れられるのか、より現実的に向き合わざるを得なくなる。
近年、組織マネジメントの分野では「ティール組織」という言葉が注目を集めている。上司・部下というヒエラルキー関係ではなく、メンバー個人に意思決定権を持たせ、それをカタリスト(何らかの行動を促進する立場・人間などの意味)がフォローする。これにより、命令がなくてもメンバーが“自走”でき、成果達成などのスピードが上がる。芳賀氏は、新規事業を進める上で、ティール組織こそが理想だと語る。
プロジェクト立ち上げ当初は、価格査定エンジンの開発で苦戦したものの、専門家の助言を得たり、優先して搭載すべき機能を絞り込んだ。そして、2015年8月にIESHILがオープンした。
開発にあたっては、スピード感を一番重視したという。一般論だと、新規事業の立ち上げにあたっては、損益計算の予想、想定される顧客像(ペルソナ)、競合状況の調査などを綿密に積み上げていく。当然、開発スピードは遅くなる。
しかし、ITの世界は参入プレーヤーが多く、プロジェクト立ち上げ時と製品リリース時ではまったく市場環境が違うケースは少なくない。顧客の想定という面でも、IESHILの開発段階では、マンションの購入・売却を検討している“普通の客”がメインターゲットだったが、実際には不動産投資家が全ユーザーの3割を占めていた。
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