12月4日、100億円を上限に購入金額の20%(最大5万円)を還元するキャンペーンをスタートしたPayPay。当初は2019年3月31日までとしていたが、予想を遥かに上回る盛況ぶりにより、わずか10日間で100億円に達し12月13日にキャンペーンは終了した。
予想を超えるスピードで100億円が消費されたのは、ビックカメラグループ(コジマ、ソフマップ含む)、ヤマダ電機、エディオン、上新電機の家電量販4社での購入が対象となったからだ。最大5万円を上限に購入金額の20%を還元されるとなると、消費者は25万円までの購入ができると考えた。しかも、1人あたりの回数制限はなし。PayPay加盟店のうち、そのような大型商品は家電量販店でしか扱っていない。そのため、家電量販店に消費者が殺到したのだ。
100億円を上限に購入金額の20%を還元するということなので、単純計算で500億円の売り上げがPayPayキャンペーンによって創出されたと思いがちだが、10〜40回に1回の確率で最大10万円を上限に全額還元特典もあったため、実際の売上規模としては500億円に満たない金額だったようだ。
PayPay側では全体売上および還元金額の詳細を公表していないが、「ボーナス100億円のうち70%近くが家電量販店で使われたのではないか」(家電量販関係者)と家電業界ではささやかれている。全体売上金額を仮に450億円とした場合、300億円強の特需が家電量販店に降って湧いた格好だ。
特にその恩恵を受けたのがビックカメラだ。他の郊外型量販の場合、キャンペーン期間中の売り上げが前年同日比120~130%前後で推移したのに対し、ビックカメラは200%を超える売り上げを達成した模様。これには大きく2つの理由が考えられる。
1つは、同キャンペーンには都市型先進層が多く反応したこと。スマートフォンを使ったバーコード決済システムは情報リテラシーの高い先進層により受け入れやすく、特にビックカメラはITに明るいデジタルユーザーを会員に多く抱えている。このため、まずは大都市店舗のデジタル機器売り場に客が殺到、キャンペーン開始当日の4日昼には決済が集中しすぎてPayPayのサーバーがダウンする事態となった。
2つめは、「ビックカメラはマーケティングが上手だった」(他の家電量販関係者)。TwitterなどのSNS、自社アプリ、ウェブサイト、テレビCM、店頭POP、店内放送などあらゆるメディアを使ってPayPayキャンペーンを大々的にいち早く告知、「ビックカメラだけのキャンペーンと勘違いする消費者が多かった」(同)ほど大量の販促策で消費者を誘引した。また、「自社のポイント8%と合わせて“28%を還元”という煽り文句も効果的だった」(同)。
他の量販よりもお得に見せる手法は他社が舌を巻くほどだったという。テレビやネットニュースで取り上げられる映像もビックカメラの店頭がほとんどだったため、消費者の頭の中に「PayPayキャンペーン=ビックカメラ」という構図がインプリンティングされていったようだ。これらにより、「今まで当社を利用したことがなかった方に、初めてご来店いただくことも多かった。特にPC、ゲーム、カメラなどがよく売れた」(ビックカメラ広報)とのことだ。
一方、郊外店の場合、クレジットカードを持たない消費者も多く、スマホ決済の浸透度の低さもあって、PayPayキャンペーンに踊らされるユーザーがそう多くはなかったことが、ビックカメラのような大きな伸びとならなかった主な要因だ。なお、キャンペーンのスタートが火曜日と平日だったことも、都市型ユーザーに有利に働いたという見方もある。
商品面から見ると、PayPayキャンペーンがスタートした当初は、PC、タブレットPC、ゲーム機、ミラーレスカメラといったデジタル商品が飛ぶように売れていった。普段の商戦でも価格下落しづらい商品、量販店ポイント付与が少ない商品が動き、特にiPadは都市型店舗から早々に姿を消した。ゲーム機も含めリセールバリューが高い商品であることから転売業者が動いたとの見方もあるが、業界関係者によると「確かに転売業者が都市型店舗に並んでいたが、全体から見ると少数であり、多くは一般消費者の手に渡ったのではないか」と見られている。
週末になるとデジタルユーザーだけでなく郊外を含む一般消費者も動き出したことから、洗濯機や冷蔵庫、エアコン、テレビといった大型家電、生活家電も売れはじめ、10日間を通してみるとほぼ全商品がPayPayキャンペーンの恩恵を受けた格好だった。
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