「新しい物を常に探し続けろ」--JALが80億円規模のファンドを設立した理由 - (page 4)

西中悠基 (編集部)2019年04月10日 12時00分
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ーーベンチャーを進めるにあたって、ハードルはあるのでしょうか。

 われわれの主となる航空サービスというビジネスの中で、「やってみないとわからない」というものを入れるには、ネガティブな意味ではなく、それなりのハードルがあってしかるべきだと考えています。どの便に乗っても安定したオペレーションやサービスが提供されるという基本品質が求められていますが、新しいものを入れたことによって、たとえば便に乗るたびにレベルが異なるのであれば、これは事業としては違うと私は考えています。どこであれば新しい挑戦ができるかを探すにあたっては、基本品質をしっかり守った上で、自分たちが持っている強みをしっかり生かせる場所が一番重要だと考えています。

 例えば、ispaceに出資して何が起こったか。ispaceは月に降りるための月面着陸船を開発しているのですが、その組み立ての一部を、日本航空の子会社であるJALエンジニアリング(JALEC)が支援することが決定しました。現在は、成田にスペースを作って支援していく体制を構築しています。月面着陸船には多くの配管があって、高度な技術を求められる溶接も必要になります。そこをJALグループであれば可能だろうと、われわれが受託しました。2017年に出資した際には、このような事ができるとは思ってもいませんでした。しかし蓋を開けてみると、日本航空の強みの部分でできないか、という話が出てきました。このような、やってみなければわからない部分があります。やったからには強みを生かすべく、一生懸命コミット感をもって考えることが重要です。

日本航空が出資した、ispaceが手掛ける月面探査プログラム「HAKUTO-R」の月着陸船
日本航空が出資した、ispaceが手掛ける月面探査プログラム「HAKUTO-R」の月着陸船

 この溶接への支援がトリガーになって、今後宇宙開発が進んだ際に、その溶接技術はJALECしか持っていないとなれば、航空機整備会社であるJALECの収入の一部を宇宙分野が占めている、と変わるかもしれません。このような事業となる一歩目を、どれだけ作るかということが重要だと考えています。

 当初は、「こんな会社があってこんなことがあるんだけど、どう?」と各部署に打診しても、面倒がられていた面もありました。しかし、JALECの話の後には「こんなものに関わらせてもらうのは嬉しい」という声が上がってきて、やはりこういう案件に関わらなければいけないと再認識しました。宇宙分野のような、全社員が「そんなところにもチャレンジしているのか」と思える象徴的なものも大事だと思いますし、ファンドの中でそういうったものを作り出せればいいかなという思いがあります。

ーー今後はどのように展開していくのでしょうか。

 ファンドは10年間の運用期間がありますが、その前半で投資はある程度終わるでしょう。その先は投資企業との協業など、事業をしっかりと育てて、最終的に10年間となると考えています。ここで重要なのは、CVCは手段でしかないということ。世界中の人やモノを運んで豊かな社会を作るということが目標だということです。

 そしてCVCは、目標に向けた手段の1つのピースでしかありません。日本航空では、これ以外にも新しいものを生み出す基盤として、JAL Innovation Labや社内起業家オーディションといった場を整えています。社内オーディションは、社員からアイデアを募集して、受賞者にアイデアの事業に取り組んでもらうというものです。彼らは2年という期限の中、ベンチャーとして取り組むので、非常に苦労はしています。ただ、それを実現するための取り組みから得られるものは大きいと思いますし、そういったチャレンジができる会社となるよう全社的に熱を広げていくことが大事だと思っています。そして、社内の人材アイデアをどうやって発掘するかという基盤のオーディション、外とつながるためのラボ、外としっかりつながっていくためのCVCという、内と外とつながるそれぞれの分野をしっかり融合して動かしていくのが、われわれが目指す方向です。

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