この方面については、「Road to VR」にVRヘッドセットのピクセル密度に関する細かい説明が掲載されている。この問題は、2DのスマートフォンやノートPC、タブレットのディスプレイにおける1インチあたりのピクセル数(ppi)の重要性に少し似ている。
いずれにせよ、その違いは非常に大きいように感じられる。さまざまなものの細かいディテールを描き出す場合は特にそうだ。筆者は高解像度で再現されたアートスタジオを歩き回ったが、この体験では、身を乗り出して彫刻作品を鑑賞し、素材や塗装の細かな変化を詳しく観察することができた。美術館の中を体験した別のデモでは、スキャンされた絵画の至近距離まで近づくことができたが、ピクセルを一切感じることなく、筆遣いや塗料の質感を見て取れた。
Varjoの創設者たちは、NokiaやMicrosoftに勤めていた経験がある。最高経営責任者(CEO)のNiko Eiden氏はNokia Researchで光学技術を開発し、その技術はMicrosoftの「HoloLens」で採用されている。Varjo VR-1の左右のディスプレイはそれぞれ1920×1080ピクセルの低残像マイクロOLEDと1440×1600ピクセルの低残像AMOLEDを組み合わせたものだ。半透明鏡を使って2つのディスプレイを融合させ、高屈折率拡大レンズを使って超高精細な部分を中央に作り出す。ものすごく奇妙に聞こえるが、筆者の目には普通に感じた。ディスプレイの中心部の方が端よりも高精細であることを知っていたとしても、だ。
Varjo社内で開発されたアイトラッキング(視線追跡)技術「20/20 Eye Tracker」もある。この機能は最高の性能と精度を備えており、今後登場するHTC「VIVE Pro Eye」などの競合製品よりも優れている、とVarjoの創設者たちは誇っている。それをデモで検証するのは困難だが、筆者は、VRソフトウェアを手がけるポーランドのスタートアップ、Superbrightが開発した航空交通管制シミュレーションを体験させてもらった。そして、何台ものコンピュータモニターに囲まれ、飛行機が滑走路を走行して離陸するのを見守った。目をあちこちに動かすと、筆者の視界に合わせるように円形の画面がすばやく動き、モニターの情報を強調表示したり、飛行機に焦点を合わせたり、ポップアップ情報を表示させたり、飛行軌跡を映し出したりした。地図の上で目を動かすと、タイムゾーンが強調表示された。視線を動かそうと思う前に、しようとしていたことが先に実行されるように感じることもあった。
Varjo VR-1はヘッドセットだけが提供されるため、それ以外のものはユーザー側で用意する必要がある。VR-1は「SteamVR」と接続するように設計されており、「SteamVR 2.0」と連携し、HTC VIVEの「Lighthouse」ルームセンサおよびコントローラに対応する。だが、価格が5995ユーロに設定されていることもあって、VR-1は、プロのニーズや完璧な鮮明さを求める3D制作およびシミュレーションに携わるクライアント特有の要求に応えることを真っ向から目指している。これは、AirBusやAudi、Bohemia Interactive Simulations、Foster + Partners、Saab、Sellen、Volkswagen、Volvoを含む初期のパートナーからのフィードバックに沿って、特別に設計されたデザインだ。何と言っても、今では人々はVRで自動車を設計している。Varjoのヘッドセットは、超高級モニターのVR版と言えるだろう。
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