そこで、ハウスマートでは最も価値変動が少ない中古のマンションに絞って展開しています。個人的に販売した家の価格推移を追ってみたのですが、中古不動産は値段変動率が最も小さいことがわかりました。また戸建ては土地の形や道路幅など定量化されていない要素が多く、価格の推定がかなり難しいのですが、マンションはデータの大半が定量化されており、かなり高い精度で価格予測ができます。この2つの理由から中古マンションに特化したサービスとしてカウルを展開しています。
データのクレンジングが優れている点だと思っています。物件データはマンション名がアルファベットだったり、カタカナだったりと、表記ゆれも多いですし、物件情報も基本的に重複しているのでそのままでは分析の基礎データとしては使えません。そこで、同じ物件情報はマッチングさせて1つにして、データの間違いを正すクレンジングが必要になります。この部分に機械学習を入れて、きれいなデータを生成しています。
――このあたりのノウハウはどこで培われたんでしょうか。ハウスマート自体が、以前勤めていた楽天のエンジニアらと立ち上げた会社でして、そのときのECで培ったデータのクレンジング技術を不動産用に転用しています。ECのデータも、出店者の方が記入する際に、表記ゆれが生じたり、同じ商品を二度登録してしまったりと、データの重複が多い業界なので、データの取扱では、その時の技術が生きています。
データのクレンジングは地道な作業なので、エンジニアの担当者も決して楽しい作業ではなかったと思うのですが、この部分に時間をかけたことで、弊社の強みにつながっていますし、サービスのポイントになっていると思います。
――不動産の物件データは、PDFだったり、紙だったりと、いわゆるIT系エンジニアの方からは驚くような状態もあるかと思います。そのあたりのギャップはどうやって埋めていきましたか。創業メンバーが、不動産業界の出身の私と楽天のエンジニアだったので、お互いがそれぞれの大変さを理解し、リスペクトしていたという部分が大きいですね。今でも、営業担当者の横でエンジニアが仕事をしていますから、仕事内容を見ていて、営業担当者が大変だなとエンジニアが見つけて、その部分をツールを作ることで補ったりしています。
余談ですが、社内レクリエーションの1つとして、エンジニアが営業担当者に家を販売してみる、ロープレ大会みたいなこともしています。結構盛り上がるんですけど(笑)、そうしたお互いの仕事をリスペクトできる体制を作り上げることが大事だなと感じています。
――営業とエンジニアといった横のつながりをうまく築かれていらっしゃいますね。上司と部下の関係はいかがですか。心理的安全性を担保するのはすごく重要だなと感じていて、月に2回30分ほど上司と部下で一対一で話す時間を設けています。フォーマットが決まっているのですが、その中には上司のダメ出しをするような項目もあります。時間はかかりましたが、これを実践することで、風通しが徐々によくなり、生産性も上がってきました。
私が不動産会社で営業を担当していた時、上司がとにかくよく怒鳴っていたんですね。なぜかと聞いてみると「怒鳴らないと仕事サボるから」と。その気持はわかりますが、上司は成約数しか見えていないため、営業担当者の顧客がどのステータスにあるかわからない。
その顧客ステータスをシステム化して見えるようにすれば、無駄に怒鳴る必要もなくなります。これは、ほかの仕事も同様で、情報を見える化すれば、社員は生産的な仕事に集中できるようになります。
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