Cocolive(ココリブ)を2017年に設立した、代表取締役CEO山本考伸氏の前職は楽天トラベルの社長だ。旅行業界から不動産業界に転身した山本氏が立ち上げたのは、不動産会社向け顧客分析&可視化サービスの「KASIKA」。住宅の購入を検討している顧客への最適な営業タイミングと提案内容を知らせるツールだ。
千に3つしか話がまとまらず「せんみつ」とも言われる不動産会社の営業に、顧客の行動をトレースし、最適なタイミングを知らせることで、その活動はどう変わるのか。KASIKAがもたらす不動産営業の変革と、異業種から飛び込んできたからこそ感じた業界の気づきについて話してもらった。
——旅行業界から不動産業界に転身されたきっかけは。
山本氏 前職でホテルの予約サイトを運営していたのですが、その時に気をつけていたのは、ただ空いている部屋を探せて予約できるだけのサイトだったら、いくらでもほかのものが作れる。唯一無二のサービスになるためにはお客様の趣味嗜好を把握し、ぴったりの出会いの場を作らないと意味がない、ということでした。
これは三木谷さん(楽天 代表取締役会長兼社長最高執行役員の三木谷浩史氏)に口をすっぱくして言われたことなんですが、予約ではなく、出会いのプラットフォームになれと。楽天トラベルでは、そうした思いのもと、出会いのプラットフォームとして宿泊先を紹介できるようにしていました。
その時に、旅行時のホテル探しは重要だけれど、これは数泊の話。もっと長く付き合う、家はより大事なのではと思ったんですね。このもっとも長く付き合うであろう「住」の世界において、一番いいものに出会えるようサポートしたいと考えたのが、Cocolive立ち上げのきっかけです。
——他業種からの参入で苦労された部分もあったのではないでしょうか。特に不動産業界はIT化が遅れていると言われていますが。
山本氏 めちゃくちゃありました(笑)。旅行という畑違いの業界から飛び込んでいますから、立ち上げから2018年の春くらいまでは、不動産業界に求められているもの、使いやすいものを常に模索していました。
模索する中で、自分たちは不動産テック企業ではなくて、不動産テックサービス企業にならなくてはいけないということに気づきました。旅行であれば、おすすめの宿泊先を掲載し、アクセス方法や使用できる施設の内容を加え、探しやすくすれば、お客様に選ばれる可能性は高い。しかし、それが家になると、その場で買わない可能性もありますし、いくらいい物件であっても、売れないこともある。これだけいい情報を、探しやすく、見せやすくしているんだから、売れるはずというのは、単なるITの押しつけなんです。
不動産を販売するには、良い物件、潤沢な情報を探しやすく、見やすくした上で、お客様のタイミングを読み取って、人の声でお声がけする必要がある。このタイミングまで読み取って接客担当者を通して最適な物件をおすすめできるのが、不動産テックサービス企業なのだと思いました。
——そうした気づきはどうやって習得されたのですか。
山本氏 本当に運が良かったのですが、サービス提供時点で数社から使ってみたいとアプローチをいただき、その会社の方にアドバイスをいただきながらブラッシュアップしていきました。
例えば、旅行サイトではウェブサイト上に「このサイトを見ている人は今○人います」とアラートと出すと、「この宿泊先の予約が埋まってしまうかも」という心理が働き、予約に結びつきやすくなります。しかし、この手法を不動産にそのまま取り入れても、お客様を焦らせるだけで、購入行動には結びつきづらい。もちろん、公開物件などで、販売実績数が重要になるケースもありますが、使い所を間違えると、大変なことになってしまう。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス