——実際に使用している不動産会社からのフィードバックがサービスに生かされているんですね。
山本氏 現在、KASIKAとメールマガジン制作代行の新サービス「ココメール」の2つを提供しており、いずれも住宅を販売している会社やデベロッパー、注文住宅を請け負う工務店など、売買不動産販売に特化したサービスになっています。
KASIKAは、住宅購入を検討しているお客さまへの最適な営業タイミングをアラートでお知らせできることが特徴です。今までの不動産営業は、常時50~100人のお客様を抱えていても、実際にコミュニケーションを取っているお客様は5~10人程度だったと思うんですね。
しかし、残り90人のお客様の中にも購入意欲が高い人はいる。KASIKAでは、ウェブサイトの物件情報を見たり、送付したメールマガジンを見てアクセスしたりと、潜在顧客の動向がわかるので、お客様が知りたいと思っているタイミングで、欲しい情報を提案できます。
不動産販売会社の方は、お客さま一人ひとりの行動を追跡して、どのページをどのブラウザから、どのくらいみていたかがわかります。この時にただ単にお客様が見ていたURLを羅列するのではなく、不動産に特化して情報の属性分析をして、スクレイピングすることで、営業担当者の方に見やすく、わかりやすく伝えるようにしています。
——営業担当者にわかりやすく伝えるという部分がポイントですか。
山本氏 そうですね。例えばお客様が見たURLを羅列するだけでも情報にはなるのですが、それで納得するのは、いわゆるテック系の人だけなんですね。実際の現場で使ってもらうには、無機質な情報ではなく、現場の営業担当者が見てパッとお客様の気持ちがわかるような情報に変換しなくてはいけない。その部分に特化しているのがKASIKAです。
実際、サービスの説明をさせていただくと、現場ベースから「使ってみたい」と声を挙げてくださることが多いです。私たちとしては、支店長に人気のツールになってきたと認識しています。
——2018年12月にリリースしたココメールはいかがですか。
山本氏 こちらも、現場の声をいかして改良を重ねました。当初は、お客さまをセグメントして異なる内容の自動メールを送れるような機能開発を先に計画していたのですが、細かな設定よりも、すべてのお客様に新しい物件を、画像入りで見やすく、きれいなメールで伝えたいというお声をいただきました。
メールマガジンによる営業は今までももちろん存在していましたが、送ってそのままになるケースが多く、手応えを感じづらかった。私たちのツールを使っていただければ、開封率、クリック率といったお客様の動向がわかりますし、さらに数カ月連絡を取っていなかったお客様が開封して、物件のページをクリックしていることなどもわかります。
——メールマガジンは、比較的簡単な営業ツールという印象がありますが、それでも難しいと感じる営業担当者は多いのでしょうか。
山本氏 難しいというより、経験がないだけなのだと思います。作ったことがないから、どのくらいの情報が必要なのか、制作にはどのくらい時間がかかるのかわからない。さらに、送っても結果が見えづらいため継続しにくい。メールマガジンが抱えていた課題を解決したのがココメールです。
メルマガの制作アドバイスおよび制作代行がセットになることで、気軽に活用でき、KASIKAと連携すれば、お客様がいつ、どの物件を見て、どのような間取りに興味があるのかもわかる。営業の効率化につながります。
——そうしたメリットを感じながらも、いわゆる「足で稼ぐ」営業を第一に考える不動産会社の方も多いのではないでしょうか。
金田氏 そうですね。サービスの内容を説明しても「電話をすればいいから」「直接訪ねればいいから」とおっしゃる不動産会社の方は本当に多かったです。そうした今までの営業活動に加えていただくために「まずは1通メールを送らせてください」とお願いしていきました。
ただ、各社が持つ顧客データは、エクセル、PDF、紙の状態のままと、書式も形状もバラバラです。それを1つひとつデジタルデータ化するところから始めました。
実際、テストとして、とある工務店の顧客300人にメールをお送りさせていただいたんですが、絶対買わないだろうと思っていたお客さまが、物件情報を見ていることがわかり、営業活動をしたら内見が決まったというケースもありました。
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