2018年の携帯電話業界は、次世代モバイル通信方式「5G」のサービス開始に向けた準備が進み、さらに楽天の新規参入が決定するなど、今後の携帯電話業界に変化を与える出来事が多い1年だった。
その一方で、菅義偉官房長官が携帯電話料金の値下げに言及したり、米中摩擦の影響を受ける形で、日本政府が中国メーカーを実質的に排除する方針を打ち出したりするなど、業界全体が政治の影響を強く受ける出来事も多く、今後の動向が不透明となりつつあるのも確かだ。
2018年の携帯電話業界を一言で総括すると、「将来の布石」ということになるだろうか。今年起きた出来事はそれだけ、今後の業界全体に大きく影響する要素が非常に多く詰まっていた。
なかでも将来に向けて大きな期待がかけられているのが、次世代のモバイル通信方式「5G」に関してだ。5Gは単に通信速度が速いだけでなく、ネットワーク遅延が少なく、しかも1つの基地局に同時に多数の機器を接続できる特徴を持つことから、従来のコミュニケーション用途だけでなく、自動運転や遠隔医療、スマートシティなどさまざまな分野に、5Gのネットワークが用いられると見られる。
その5Gに向けては、2018年に大きな動きが相次いだ。2月に実施された平昌冬季五輪大会で、韓国のKTとサムスン電子が試験的に5Gの実証実験を開始したのを皮切りに、同じく2月に開催された「Mobile World Congress 2018」で、エリクソンやファーウェイなどのネットワーク機器メーカーが5Gに関する展示を積極的にアピールしていた。さらに10月には米Verizonが、家庭用のブロードバンドサービスとして5Gの商用サービスを開始し、実用化の火ぶたが切られたこととなる。
日本での5Gの商用サービス開始は、東京五輪大会が開催される2020年が予定されており、総務省も12月には5G用の周波数帯の割り当て方針を決める。現在は携帯大手3社がさまざまな実証実験を実施し、商用化に向けた準備とアピールを推し進めている段階だが、世界各国で5Gの商用化を前倒しする動きが相次いでいることから、日本でも2019年に実施されるラグビーW杯に合わせる形で、5Gの試験サービスが提供される可能性が高い。
そしてもう1つ、2019年以降に向けた大きな動きとなったのが、楽天の携帯電話事業参入が正式に決定したことだ。楽天は2017年末に携帯電話事業への参入を発表し、携帯電話事業を担う子会社「楽天モバイルネットワーク」を設立。総務省が4G向けに新たに割り当てる周波数帯の免許獲得に乗り出し、4月に無事1.7GHz帯の免許を獲得したことで、正式に携帯電話事業への参入を表明した。
楽天は2019年10月のサービス開始に向け、現在はネットワークインフラの設置に向けた取り組みを積極的に進めているところだが、サービス開始時点で利用可能なエリアはかなり限定されると考えられる。そこで楽天は11月にKDDIとの提携を発表し、都市部以外は当面KDDIのネットワークとのローミングでまかなう方針を示している。
一方でこの提携にはローミングだけでなく、楽天がKDDI側に決済や物流のインフラを貸し出すなど、相互に踏み込んだ提携となっていたことが驚きをもたらした。楽天の参入、そして2社提携による影響がどのような形で出てくるのかは、2019年大いに注目されるポイントになるだろう。
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