さらにもう1つ、政治が携帯電話業界に大きな影響を与えた出来事が、ここ最近話題になっている、ファーウェイなどの中国企業に対する措置である。12月に入り、米中摩擦を発端として日本政府が中国企業を政府調達から排除する方針を決めたとの報道がなされ、大きな話題となっていることをご存知の方も多いことだろう。
実は2018年は、以前から米中間でくすぶっていたこの問題が大きくクローズアップされた年でもある。例えば1月には、ファーウェイがスマートフォン事業の米国進出の足掛かりとして、米国の大手携帯会社から当時の最新機種「HUAWEI Mate10 Pro」の販売を予定していたのだが、発表直前にキャンセルされるという出来事が発生している。
さらに4月にはZTEが、米国が制裁しているイランや北朝鮮に通信機器を輸出していた影響で、米商務省から米国企業との取引を禁止されるという非常に厳しい措置を受けた。ZTEはクアルコムなど米国企業から部材やソフトなどを多く調達しているだけに、この措置によって経営が破たんする寸前にまで追い込まれる事態となったのである。
そして12月には、ファーウェイのCFOである孟晩舟氏が、米国の要請を受ける形でカナダで逮捕されるという出来事が起きた。この出来事をきっかけとして、米国は日本など同盟国に対して中国企業の通信機器を使用しないよう要請したと見られている。一連の出来事を見れば、米国がいかに中国の通信企業に強い警戒心を抱いているかが分かるだろう。
携帯電話会社のネットワーク設備に関しても、政府からファーウェイやZTEの機器を導入しないよう要請がなされ、両社の設備を導入しているソフトバンクなどは影響を受けるとの報道も見られた。そのソフトバンクの代表取締役社長である宮内謙氏は12月20日の上場会見において、「政府のガイドラインを見極めたい」と回答。現時点で何らかの要請があるかどうかは不明だが、基本的には政府の方針に従う意向のようだ。
ファーウェイやZTEは世界的に事業を成長させており、日本でも成功を収めつつあった。例えばファーウェイは、ネットワーク設備に関してソフトバンクだけでなく、NTTドコモとも実証実験を実施し、5Gではより多くの携帯会社への機器導入を推し進めようとしていた。また端末に関しても、2018年は大手3社にスマートフォンを再び提供を開始してシェアを拡大、3つのカメラを搭載した「HUAWEI P20 Pro」はその技術力の高さでも話題を集めた。
それだけに今回の出来事は、ファーウェイやZTEにとって大きな痛手となることは確かだろう。だが正直なところ、現在の携帯電話産業は中国を抜きにして成り立つのが難しい状況となっているのも確かであり、両社と取引のある米国、そして日本の企業も大きなダメージを受ける可能性がある。米中関係の改善が進まない限り現在の状況は大きく変わらないと見られるだけに、今回の出来事が2019年以降、業界全体に大きなマイナスの影響を与えることが懸念される。
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