大手携帯キャリア3社の、2018年度第1四半期決算が出そろった。いずれも増収増益と幸先の良いスタートを切ったが、主力の通信事業は伸び悩み傾向が鮮明となりつつある。そのため、決算説明会では「2年縛り」「4年縛り」など行政から受けた指導への対応や、QRコード決済など主力の通信事業以外に関する動向が注目されるようになってきた。先行き不透明な各社の決算を、改めて振り返ってみよう。
先陣を切って8月1日に決算を発表したのはKDDI。同社の2019年3月期第1四半期の売上高は前年同期比1.9%増の1兆2217億円、営業利益は前年同期比2.6%増の2887億円と増収増益を記録している。しかし、2017年まで伸びを支えてきたモバイル通信料収入が112億円の減となり、好調な業績の足を引っ張るなど内容には変化が見られる。
その理由は、2017年7月に導入した「auピタットプラン」「auフラットプラン」の好調によるところが大きいという。実際両プランは、2018年5月31日時点で800万契約、同年7月31日時点で900万契約を突破するなど好調だが、一方でデータ通信が少ない人が段階制のauピタットプランに移行したことが、収益の減少につながっているようだ。
ただし、auピタットプランは、KDDIがここ数年来悩まされてきた低価格サービスへの顧客流出抑止にもなっており、au解約率は前年同期比0.2%減の0.71%と、大幅に改善している。かつてNTTドコモが「カケホーダイ&パケあえる」を導入したものの、データ通信利用が増えず大幅に業績が悪化したことがあるだけに、Netflixとの提携で提供する「auフラットプラン25 Netflixパック」などの工夫による、データ通信利用の開拓が大きな課題になるといえそうだ。
翌日の8月2日にはドコモが決算を発表した。売上高は前年同期比3.8%増の1兆1767億円、営業利益は前年同期比9.9%増の3099億円と、こちらも増収増益を記録している。けん引役は引き続き、固定ブロードバンドサービスの「ドコモ光」によるところが大きい。
しかし、モバイル通信自体は伸び悩み傾向にあり、契約の伸びを支えているのもスマートメーターなどM2M向けの通信モジュールという状況だ。そこでドコモは今後、携帯電話の契約から共通ポイントプログラム「dポイント」の会員制度「dポイントクラブ」の契約へと、事業基盤を移す方針を示している。そのdポイントクラブの会員数は前年同期比7%増の6652万、dポイントの利用に必要なdポイントカードの登録数も前年同期比1.7倍の2513万へと拡大。顧客基盤の強化という意味では順調に成長を続けているようだ。
8月6日に発表したソフトバンクグループの決算は、売上高は前年同期比4%増の2兆2728億円、営業利益は前年同期比49%増の7150億円。こちらも増収増益の決算となっている。ソフトバンクグループ全体で見ると、ソフトバンク・ビジョン・ファンドが利益を大きく押し上げており、同社の代表取締役社長である孫正義氏が、注力分野を通信からAIに大きく移すと発言したことが話題となったが、国内通信事業の業績はどうだろうか。
決算短信からその内容を確認すると、売上高は前年同期比4.6%増の8805億円、利益は0.7%増の2218億円と、増収増益となっている。スマートフォンの販売単価上昇と「ソフトバンク光」の好調がその要因で、今回からLINEモバイルが傘下に入ったことで、スマートフォンの純増数が58万件に拡大したとのこと。一方で主要回線の解約率は前年同期比0.1%減の1.03%と大きく変わっておらず、ARPUが前年同期比50円減の4320円と、こちらも減少傾向にあるのは気になる。
ソフトバンクもやはり国内での契約数拡大による売上増を見込むのは難しいことから、孫氏は「Beyond Carrier」と打ち出し、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資先企業との合弁で通信以外の分野の拡大に乗り出している。7月に滴滴出行との合弁で、2018年秋よりタクシー配車事業を手掛けると表明したのも、その一環といえるだろう。
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