10月末から11月頭にかけて、大手携帯キャリア各社の2018年度第2四半期の業績が発表された。NTTドコモが2019年に新料金プランで通信料金の値下げを発表する一方で、KDDIが楽天と提携するなど、行政の影響と今後の競争激化に向けた、大きな発表が相次いだ今回の決算を改めて振り返ってみよう。
今四半期の決算に大きな波乱をもたらしたのは、やはりドコモだろう。同社は10月31日に決算説明会を実施し、売上高が前年同期比4.1%増の2兆3895億円、営業利益が9.1%増の6105億円と、増収増益の好調な決算を記録したのだが、より大きなインパクトを与えたのが、通信料金を値下げする新料金プランの発表である。
同社の代表取締役社長である吉澤和弘氏は、現在の料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」の提供から4年が経過した今、独自調査で48%の顧客が料金プランが分かりにくいと感じており、複雑でお得さが感じられないと評価されていると話す。そこで「シンプルで分かりやすいプランに大胆に見直していきたい」と、新料金プランの導入を発表した。
その新料金プランは2019年春に導入される予定。通信料と端末代を分離した「分離プラン」を軸にしたものになるそうで、導入により顧客の利用状況に応じて、2〜4割程度の値下げを実現するとしている。そして新料金プランの導入を含め、1年あたり4000億円規模の顧客還元を実施すると吉澤氏は話す。
菅義偉官房長官が8月に、携帯電話料金は4割値下げの余地があると言及したこと、そして新料金プランに「4割」というキーワードが出たことから、説明会会場では行政の圧力を問う声が多く上がっていた。吉澤氏は「自主的にやったこと」と回答したが、ドコモは現在でも是非の議論が続いている海賊版サイトのブロッキングに関しても、2018年に政府が打ち出した自主対応の要請を受け、大手3社の中で唯一ブロッキングの導入を決めるなど、行政の要請には非常に従順な傾向にある。
それだけに気になるのが、ドコモの業績が今後も、政府の動向に大きく振り回されてしまう可能性があることだ。菅官房長官は携帯電話料金値下げに対して非常に厳しい姿勢で臨んでいく方針を示しているだけに、新料金プランの導入でもなお競争が促進されなかった場合は、業界全体にさらなるプレッシャーをかけてくる可能性がある。
ドコモは大規模な顧客還元で通信事業は当面減収となる見込みだが、顧客基盤と法人パートナーを生かしたビジネスの拡大、そして5Gによる新しいビジネスの創出などによって、2023年度には利益を2017年度と同程度の9900億円に回復させるとしている。だが、行政の圧力に対応し続ける形で顧客還元が増えてしまえば、それがダイレクトに業績に影響する可能性は否定できない。新料金プランで行政側の影響をいかに最小限に抑えられるかが、今後のドコモにとって重要な意味を持つといえそうだ。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」