ソフトバンク孫氏にも余波?注目集まるサウジ皇太子とシリコンバレーとの距離感 - (page 5)

シリコンバレー勢に対して高まる(メディア側からの)圧力

 損得勘定で大部分が動いているような印象のあるウォール街や軍事産業と違い、シリコンバレーのテクノロジ関連企業には、「世界を(もっといいものに)変える」というような理想主義的なところ=ナイーブさがまだ多少は残っている。そしてそんなナイーブさに訴えかけるような論調の記事がさっそく一部の有力媒体に出ている。

 Recodeの記事では、「MBSの肝いりでもうすぐ首都リアドで開催される経済カンファレンス(Future Investment Initiative 2018)への出席取りやめ以上のこと」を、シリコンバレーの投資家たちに対して呼び掛けている(それ以上は踏み込んでいない)。

 これに対して、NYTの論説では「今回の件の真相がはっきりするまで、米テクノロジ企業は、サウジからの金を受け取ってはいけないし、またすでに出資を受けたところは返却すべき」というところまで突っ込んで書いている。そして、それを読んでいるはずの米国市民にとって馴染みが深いブランドはUberやWeWorkといったビジョン・ファンドの有名な投資先のほうだろう(軍事産業や機関投資家などに比べて、という意味)。

 肝心のシリコンバレー関係者の反応については非常に流動的で、MBSと距離を置くことをはっきりさせたSam Altman氏(Y-Combinatorの社長)など一部を除いてまだ態度保留といった感じも受ける。これについてひとつの試金石となるとされているのが、来週(23日)から始まる予定の上述の経済カンファレンス(「砂漠のダボス会議」とも言われる)だ。サウジ国内の経済開発に必要な投資を国外から呼び込むためとされるこの集まりに誰が参加するか(あるいは、出席を見送るか)が注目を集めている。

 このWSJ記事には日本時間15日夜時点で、JP Morgan Chase、BlackRock、Blackstoneといったウォール街の最大手企業のトップ、それからPIF、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの両方から出資を受けているUberのCEO、Dara Khosrowshahi氏あたりが参加取りやめの意向を明らかにした、と書かれている。

「虎穴に要らずんば虎子を得ず」だが……

 孫氏は9月下旬、Bloomberg Businessweekに対し、ビジョン・ファンドの第2号立ち上げを公言していたばかり(ただし具体的な詳細はこれから)。またそれを追いかける形で先週、MBSも2号ファンドへの資金提供(またもや450億ドル)の意向を明らかにしていた。

 2000年代はじめのネットバブル崩壊で、資産の9割以上を失いながら、そこから盛り返して大復活を遂げた孫氏のことだから、今回の騒動などは大騒ぎするほどのことではない、むしろどう切り抜けるかを楽しめる程度の苦境かもしれないと、勝手に想像している。しかし、世界情勢を直接的に左右するような大国同士の軋轢やら、人殺しの絡んだ物騒な話に巻き込まれる(とばっちりを食う)というのは、さすがに未経験かもしれない。

 そんな状況を孫氏がどう乗りきるか、それとも……。いずれにしてもしばらくは目が離せない。

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