ソフトバンク「1000億ドル投資ファンド」に出資するサウジアラビアの台所事情

 ソフトバンクが2016年10月に設立を発表していた「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」(1000億ドル投資ファンド)。あのファンドの資金集めが1月中にも締め切りになるようだとBloombergで先ごろ報じられていた。同ファンドにソフトバンクが250億ドル、そしてサウジアラビア(以下、サウジ)政府が450億ドルをそれぞれ出資することは10月に伝えられていた通りで、また12月初めに孫正義社長がDonald Trump次期米大統領と会い、同ファンドで集めた資金の半分に当たる「500億ドルを米国(の企業)に投資する」と公約していたのもおそらくご存知だろう。

 Bloombergによると、孫社長はあの会談の少し前に「出資希望者殺到(‘Oversubscribed’)」などとコメントしていたようだが、年末から年明けにかけてはAppleやQualcomm、Foxconn、Larry Ellison(Oracle創業者)といったあたりも出資予定もしくは出資を検討といったニュースも流れていた(「出資希望者殺到」もまんざらハッタリではなかったらしい)。

 今回はこの前代未聞のベンチャーファンドに5兆円超もの資金を出すことにしたサウジ側の台所事情などについて、いくつか興味をひいた話を紹介する。なお執筆にあたってはNHKのサイトにある下記の記事が大いに参考になった。詳しいことが気になるかたは是非ご覧いただきたい。

ソフトバンクの陰にサウジの戦略(2016年10月25日付)
サウジアラムコ上場 誘致大作戦(2017年1月6日)

決して楽とは言い難いサウジの台所事情

 サウジに限らず「中東の産油国」というと「金満」という言葉を真っ先に思い浮かべてしまうような私にとって一番意外だったのは、ここ2年ほど続いた原油安の影響で、サウジ政府がこれまでの蓄えを取り崩し、さらに借金さえしながら、国家財政をやりくりしていたという点だ。

 上記のNHK記事(前者)の中には、「今の水準で原油安が続けば、あと5年で(サウジの)オイルマネーの蓄えは底をつく」とする国際通貨基金(IMF)の指摘が紹介されている。またちょうど1年ほど前に出ていたWSJ記事の中にもこの指摘を裏付ける一節がある。「サウジの国家財政は2015年に約980億ドルの赤字(過去最大の赤字額)を記録」「2014年8月に7460億ドルあったサウジの外貨準備高は(2015年)11月末時点で6355億ドルまで減少」といったあたりがそれに当たるが、この金額はその後さらに減り、2016年10月末には5359億ドルになっていたという(Reuters)。なお、サウジの5359億ドルという金額は、中国(3兆516億ドル、日本(1兆2427億ドル、スイス(6855億ドル)に次いで国別で世界第4位だそうだ(Wikipedia)。

 2016年11月末に流れていた「石油輸出国機構(OPEC)が8年ぶりの減産に合意」というニュースも見つかる。サウジが基本的に仲の良くないイランと妥協することにしたのも、このあたりの事情が直接影響していたようだ。

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