KDDI傘下のSupershipホールディングスは10月11日、事業戦略説明会を開催した。既存のDSP(Demand-Side Platform)、SSP(Supply-Side Platform)事業に軸足を置きながら、ビッグデータ分析や海外進出、そして新規事業で合計14兆円規模の市場に挑戦する。
Supershipホールディングスの前身は、「Syn.(シンドット)ホールディングス」。2014年10月に、スマホ時代の“中心のない”ポータル「Syn.」構想を掲げ、互いに連携する多様なサービスを提供していた会社だ。しかし、サービスの利用者数が伸び悩み、2018年7月9日にはSyn.関連サービスを終了させた。そして10月1日、事業戦略説明会に先立って社名をSupershipホールディングスに変更している。
Supershipホールディングスの代表取締役CEOを務める森岡康一氏は、「Syn.構想は大きなものだったが、サービスを提供する各社の足並みがそろわず、構想が先走りしてしまった。その結果ユーザーをあまり獲得できなかった」と反省しながらも、「失敗から得るものもあった。そのような意味では良いチャレンジだった」と振り返った。
森岡氏は失敗から得た教訓として「データがきちんと流通すれば、各社の利益が上がっていく」ことに気づいたという。そして、この教訓から「これからはデータを中心とした事業を進めていこう」と決め、Supershipホールディングスを「Data Technology Company」として成長させていく方針を固めたという。
新事業戦略は3本の柱で構成する。1本目は「デジタルマーケティング強化」。これは既存のDSP/SSP事業、つまりデジタル広告事業だ。2015年の5社合併に参加したScaleOutが開発していたDSP/SSPサービスを基にした事業だ。この事業は合併以来急激な勢いで成長しており、DSP事業は年平均成長率が49%、SSP事業は78%を記録し、まだまだ成長の余地があるという。今後は、これまでの広告配信の実績で得たデータをさらに活用して、より効果が高いサービスを提供するという。
2本目は「データプラットフォーム構築」。企業がデジタル広告を企画する際に、自社で所有するデータだけを分析してターゲットを絞っても大きな効果は得られない。そこで、顧客企業のデータにSupershipが持つ膨大なデータ、さらに他業種の企業のデータなどを統合し、分析可能な形に整形して管理する。Supershipはこのサービスを「Fortuna」と名付け、10月11日からサービスを開始することを明らかにした。
膨大な異種データの統合や、データの維持管理には高度な専門的知識が必要で、なおかつ手間と時間がかかる作業であり、膨大なデータを前に頭を抱えている企業も少なくない。そのような企業にとって、Fortunaは価値あるサービスと言えるだろう。
さらに、Fortunaでは、統合、整形したデータを統計分析や機械学習で分析するサービスも提供する。Supershipはこのサービスを提供するために機械学習などを活用した高度なデータ分析技術を持つスタートアップ企業「DATUM STUDIO」の株式を取得し、連結子会社とした。そしてFortunaでは、分析結果に応じた広告施策を立案し、ウェブやスマホアプリ、SNSなどに広告を配信するサービスまで提供する。
3本目は「アドプラットフォームの展開」。デジタル広告事業の海外展開を目指す。Supershipホールディングスはこのために、中国のパブリッククラウドサービス事業者であるJD Cloudと提携を結んだ。JD Cloudは中国のEC市場で第2位のシェアを誇るJD.comの子会社だ。
Supershipホールディングスによると、中国のデジタル広告市場は6.9兆円もの規模に達するという。これは日本の同市場と比較すると4.9倍の規模だ。Supershipホールディングスは、同社のDSPサービス基盤と運用ノウハウに、JD Cloudが持つ膨大なデータとクラウド基盤を組み合わせて、中国での事業を開始する。
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