SNSで自然に会話するように、さまざまな作業を言語ベースで実行できる「チャットボット」。これまでは、エンドユーザー向け接客ツールとしての側面が強かった。しかし昨今は、社内業務の効率化に役立てようという動きが出てきている。チャットボット構築サービス「SMART Message BOT」で知られるネオスの菊地宏之氏(バリュークリエイション事業部)が解説した。
ネオスは2004年4月設立(当初の社名はプライムワークス)。以来、携帯電話キャリア向けのソリューション開発などで業務を拡大させてきた。AI開発にも積極的で、2年前の2016年からはその発展版として、法人向けのチャットボット構築サービス「SMART Message BOT」の提供を本格化させた。
菊地氏はチャットボットの現状について「BtoCからBtoEへの移行期ではないか」と分析する。例えば、ヤマト運輸がLINE上で提供している荷物問い合わせ・再配達受付AI、アルバイト情報サイト「フロムエー」のパン田一郎などはBtoCチャットボットの代表格だ。
BtoC型チャットボットの魅力は、普段使い慣れたユーザーインターフェイス(具体的にはLINEのトーク画面など)から直接利用できる点にある。バックエンドに高度なAIが用意されていようとも、ユーザー側には特別なリテラシーは必要ない。
このメリットはBtoE(Business to Employee)、つまり従業員向けのサービス領域でも当てはまる。ヘルプデスク、経理関係の問い合わせなどをチャットボットで応対できるようにすれば、生産性向上にも直結する。菊地氏の実感としても、BtoEチャットボットは今まさに増加中という。
では、企業がチャットボットを導入するにあたって、どのような点に注意すべきなのだろうか。菊地氏はまず「チャットボットには必ずしもAIが必要ではない」点を挙げる。
チャットボットと一口に言っても、求められる機能はさまざまだ。例えば、保険金の支払い条件の判断をチャットボットで行うには、状況分析が高精度でなければならず、そのためにも莫大な量の事故事例をディープラーニングで常に学習する必要がある。
対して宅配ピザの注文などは、ルールベースの言語処理ができればそれで十分。高価なAIを持ち込む必要はない。「要件に適した認知・判断システムの構築、そして運用効率ををまずは考えるべき」と菊地氏は語る。
また菊地氏が特に強調したのは、AIには維持・運用の概念がある点だ。同氏は、「AIは学習モデルを一度構築してそれで終わりではない。学習データを日々投入し続けて、適切な状態を維持しなければならない。その過程では当然高度な知識も必要になってくるし、それを1社の力だけでやるのは難しい」としている。
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