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嘉戸社長が考える“新規事業”に必要なこと--「LINEモバイル」が生まれるまで

藤井涼 (編集部) 阿久津良和2018年09月07日 08時00分
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 格安スマホサービス「LINEモバイル」は、2016年9月のサービス開始以降、主要SNSのデータ通信量をカウントしない料金プランなどによって、その存在感を強めてきた。2018年1月末にはソフトバンクの傘下に入ることを発表。同年7月にはマルチキャリア化や「スマホ代 月300円キャンペーン」を打ち出すなど、LINEの子会社でありながら独自路線で次々と新たな施策を展開している。

LINEモバイル代表取締役社長の嘉戸彩乃氏
LINEモバイル代表取締役社長の嘉戸彩乃氏

 ここでは「新規事業の創り方」をテーマに、LINEモバイルの事業化までの道のりや現状の手応え、サービス開始からわずか1年半ほどでソフトバンクの傘下に入る決断をした理由などについて、LINEモバイル代表取締役社長の嘉戸彩乃氏に聞いた。

入社1年で社長に抜擢された理由

――まず、嘉戸氏がLINEに入社するまでの経歴を教えて下さい。

 私は大学卒業後の2008年4月に外資系証券会社のUBS証券に入社し、TMT(テレコム・メディア・テクノロジー)業界の顧客向けにM&Aアドバイザリー業務や資金調達のアドバイスなどを5年ほどしてきました。しかし、資金調達は顧客から出てきた情報や資本市場の状況、GDPの動きを鑑みつつシミュレーションをするもので、「自分で何かを作り出している感」を得られません。

 ちょうどその頃に顧客だった方が事業を立ち上げる話があり、私もそこへの参加を決めました。その会社では通信キャリアを顧客として携帯基地局の設備を効率化するサービスを提供していました。たとえば、オフィスビルではアンテナ基地局を各所に設置していますが、それをデバイス1つで代替することで工事を不用にするというものです。

 そのベンチャー企業に2年ほど務めた後、紆余曲折を経て2015年2月にLINEへ入社しました。もともとはLINE VenturesのCVC(Corporate Venture Capital)投資担当として入社したはずでしたが、入社初日に配属されたのは当初とは異なる、LINE内で新規事業を創出する事業戦略室という部署でした。

――それは話が違いますね(笑)。そこからLINEモバイルはどのようにして生まれたのでしょう。また、なぜ入社1年の嘉戸氏が社長に抜擢されたのですか。

 事業戦略室では、何かを生み出すという目標がありました。MAU(月間アクティブユーザー数)1000万人を達成するサービスや、月間売り上げ10億円を実現するビジネス、もしくはゲームチェンジを実現するビジネスなど。いくつか検討したところ、モバイル事業はこのどれかに当てはまるよね、というところから検討が始まりました。

 いろいろなスタディをする中で、LINEならこのような価値を顧客に提供できるのでは、と具体的な筋道が見えてきたところでGOサインをもらいました。なお、事業戦略室から生まれた他のサービスとしては、「LINE MUSIC」や「LINEバイト」「LINEマンガ」などがあります。

 社長に抜擢された理由は、私を指名した舛田(同社取締役CSMOの舛田淳氏)に聞かないと分かりません(笑)。もちろんモバイルなど通信事業の構造やKPI(主要業績評価指標)、ネットワークについては証券会社時代の事業計画書作成などで理解していました。そういった能力・知識を買われたのかもしれませんが、最終的には度胸……でしょうか。

 何となく分かるのは、ビジネスの現場感を持っていたことでしょうか。新規事業を立ち上げる際に必要な情報や人材、物事を進める推進力など、ゴールを逆算して足りないものを埋めていく力はあると思います。そこが社長に向いていると判断されたのかもしれません。


――モバイル事業は一般的なウェブサービスよりも利用者のライフスタイルに深く関わり責任もともなう、ある意味で“重たい事業”だと思うのですが、LINEモバイルを開始するまでの道のりはどうでしたか。

 設備投資量や基地局設置の展開範囲といったキャリア的な動きが入ると重くなりますが、LINEモバイルは法制度が整い、キャリアからネットワークを借りて立ち上げられるMVNOビジネスなので、それほど重いことはありません。

 どちらかといえば難しいのは、モバイルサービスという大多数のプレイヤーが存在するなかでどのように戦っていくか、顧客にどのようなサービスを提供するのか、LINE本体に何を還元していくのかといった設計に悩まされました。もちろん基幹システムやUI開発はゼロから着手したので大変でしたが、皆さんが想像するような苦労は多くありません。

――LINEが自らモバイル事業を手がけることによる相乗効果はどこにあると考えますか。

 通信事業の本質は「コミュニケーション」という文脈において、LINEというサービスはコミュニケーションそのものです。そこに親和性があるのではと考えました。そのため、コミュニケーションに関わる通信量はすべて無料にするといった立て付けや、LINEを通じたマーケティング活動をすることで認知度を高めるといった軸がありました。

 大手キャリア各社の動きで分かりやすいのが、ポイントや生活に即したサービスなど、目指しているところが皆一緒ということです。何らかの経済圏内で回していくものを作ろうとしています。結局のところLINEも一緒。異なるのはMVNOという立場なのか、キャリアという立場なのか程度でしょうか。

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