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銀座の一等地にオフィスを構えたベンチャーの覚悟--プレイド倉橋社長に聞く

藤井涼 (編集部) 日沼諭史2018年08月27日 08時00分
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プレイド代表取締役の倉橋健太氏
プレイド代表取締役の倉橋健太氏

 ウェブサイトやアプリの訪問者の行動・感情をリアルタイムに解析し、一人ひとりに合わせた接客を可能にするCX(顧客体験)プラットフォーム「KARTE(カルテ)」を手がけるプレイドが勢いに乗っている。サービス開始から3年で数多くの企業のサイトに導入され、これまでに同社のツールを通じて22億もの顧客の行動が解析されるなど、マーケティングツールとしての存在感を高めている。

 4月には、顧客の感情や行動を“視覚的”に把握できる機能を実装することで、KARTEを従来以上に“人”を軸にしたマーケティング活動を可能にする「CXプラットフォーム」へと進化させると宣言。これにあわせて27億円の大型調達も実施し、2014年以降の累計調達金額は34億円に達した。

CXプラットフォーム「KARTE(カルテ)」

 プレイドの勢いはこうした事業面だけに留まらない。7月から東京・銀座の大型複合施設「GINZA SIX」へと移転し、2039平方メートルもの広大なフロアスペースを占有するオフィス環境を作り上げた。社員数80名ほどのスタートアップ企業としては前例のない、大胆な“投資”をしたという意味でも一部で話題になった。

 「このレベルのビルは僕らにはふさわしくない」と自ら言い切るのは、プレイド代表取締役の倉橋健太氏。同社がKARTEの新たなコンセプトとして打ち出しているCXプラットフォームで目指しているものとは何か。そして、なぜベンチャー企業でありながら、銀座の一等地にオフィスを構えるという大きな決断をしたのか、倉橋氏に思いを聞いた。

にぎやかな繁華街にある「未完成」のオフィス

 2017年4月に開業したばかりで、まだ真新しさが感じられるGINZA SIX。表通りのにぎやかな喧騒とは裏腹に、10階にあるプレイドのオフィスはひっそりとしている。誰もが無言で黙々と仕事をしている……というわけではない。ミーティングや立ち話の会話があちこちから聞こえてはくるものの、全社員80名のデスクがあるのはオフィスフロア全体の4分の1にも満たないエリア。その人員規模に対してオフィスがあまりにも広大なため、静かに感じられてしまう。長辺が100メートル以上あるそのフロアの端から端まで、会話程度の声が届くわけがないのだから、当然と言えば当然だ。

全社員80名のデスクがあるのはオフィスフロア全体の4分の1にも満たないエリア
全社員80名のデスクがあるのはオフィスフロア全体の4分の1にも満たないエリア

 見た目の印象は、ひと言で言えばシンプル。もっと平たく言えば、がらんとしている。オフィスに「未完成」というコンセプトを掲げているとおり、凝った意匠も仕切りもほとんどなく、入口には受付ブースもない。視界を遮るものがほとんどないため、オフィスの全体像をひと目で把握できる。

 独立したミーティングルームはもちろん存在しないが、フロアの一角に無造作に転がっている木製のボックスをアレンジして椅子やテーブル代わりにすれば、即席のミーティングスペースができあがる。社員全員が寝そべることもできそうな人工芝が敷き詰められたエリアもあり、リラックスして仕事する人や、談笑する姿が見受けられる。

無造作に転がっているボックス。ミーティングを始めるときは都合がいいように自由に動かしてOK
無造作に転がっているボックス。ミーティングを始めるときは都合がいいように自由に動かしてOK
レクリエーションスペースとしても使える人工芝エリア。窓際にはソファもある、リラックスできる空間
レクリエーションスペースとしても使える人工芝エリア。窓際にはソファもある、リラックスできる空間

 銀座の中心部という立地に、高級ブランドショップが入居する最新の複合施設。その高層階にオフィスを構えるために、果たしてどれほどの賃料が必要になるのかは想像もできない。しかし、倉橋氏が「最初は株主全員が反対した」と打ち明けたことからも、設立から数年のスタートアップ企業が通常入居できるような額でないことだけはわかる。外部から見れば“分不相応”とも取られかねないそんな場所に移転した理由について、倉橋氏は「より大きなチャレンジをするというマインドを内部に持たせ、外にも表明したい」という気持ちの表れだったと話す。

「大きなチャレンジ」に向かうKARTE

 「大きなチャレンジ」とは何か。冒頭で紹介した通り、同社の事業の柱であるKARTEは、2018年に入ってからスマートフォンアプリにも対応したうえで、ウェブ接客ツールからCXプラットフォームへとコンセプトチェンジし、27億円もの資金を調達した。こうした一連の動きは、同社にとっては創業以来初めての大きな変化であり、チャレンジと言える。

 マーケティングツールであるKARTEは、ECサイトなどで、顧客が何回そこに訪れたか、何を購入したのかといったデータに加え、購入の意志決定に至る前の顧客行動に関するサイト内外のデータまで含めて分析ができる。「人に結びつくすべてのデータを人軸で管理」し、「顧客がサイト上にいるときからリアルタイムでデータが浮かび上がってくる環境」を提供しているのが特徴だ。

「KARTE」の企業向け管理画面
「KARTE」の企業向け管理画面

 KARTEの利用者はECサイトが約半数、残りは人材、不動産、金融、BtoB系クラウドサービスなど。ECサイトのなかではアパレル系が多くを占めている。アパレル業界ではアプリの重要性が高まっており、ポイントカード代わりにアプリを使う流れが増えてきているそうだが、「購入に至らなかった人を含めて、エンゲージメント、ロイヤルティをどう上げていくか」が課題になってきていると倉橋氏は話す。そのため、ECサイトとリアル店舗との連携を進めるべく、最近ではポイント連携、在庫連携などを目的とした基盤ツールとしてKARTEを活用する動きも出てきているという。

 4月に新たに打ち出したCXプラットフォームというコンセプトでは、人軸で管理している多様なデータを、より可視化していくという方向で進化させるとしている。たとえば「ウェブサイトに来て、しばらくして離脱した人。数字上は1PVになるけれど、なぜ離脱したのか、なぜ来たのか」を、数値で分析するのではなく「見ればわかる」状態にすることを目標としている。定量的な分析というよりも、個別の人の行動からその理由を探る、これまで以上に定性的な分析に向いたツールへと発展しようとしている。

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