“わざわざ集まる”コミュニケーションを取り戻す--ミクシィ木村新社長に聞く - (page 2)

 私の見方として、ファイトリーグはいいチャレンジができている、ととらえてます。モンストとは全く違う取り組みでやっていくべきというのが前提にあって、モンストは協力してCPUと戦うものであるのに対し、ファイトリーグではチームメイトがそばにいて相談しながら、同じように人間の相手チームと戦うというものでです。取り組みとして自信を持っています。

 ただご指摘のように、市場の評価としてそこまでには至っていないということも認識しています。ヒットが求められているのも事実なので、そこはモンストを展開していくことで、経営は底支えしていきます。もちろん対戦型のゲームについては研究開発も進めていて、新しいタイトルも仕込んでます。2019年度にはリリースできるかと。

 私は、スマートフォンにおける対戦ゲームのジャンルで、勝者たる存在はいないという認識でいます。もちろん一定の認知やアクティブユーザーが存在して、事業として黒字化しているタイトルはあると思いますが、トップクラスのゲームアプリと比べると、市場規模はまだ小さいです。

 そもそも対戦ゲームという市場をどのように広げていくのかという課題があります。eスポーツのマーケットが広がっていくのは業界全体で考えないといけないですし、そのなかで登場するヒットタイトルが我々であればうれしいと。少なくとも、スマートフォンをベースとした対戦ゲームにおいて、ファイトリーグのアプローチは間違っていないと思ってます。

 今国内ではeスポーツを盛り上げようという機運が強くあります。海外での主流はPCゲームですが、国内ではスマホゲームの市場が圧倒的ですし、スマホゲームでのeスポーツ代表格となるタイトルが出てこないと厳しいと思っています。逆に、それだけの市場が眠っているともとらえています。ファイトリーグが成長していくのか、新しいタイトルになるかはわかりませんが、この市場も切り開けたらと思います。

あくまで「コミュニケーション屋」として進んでいく

――新しい柱として成長していたチケットキャンプについて、事業が終了する形となりましたが、木村さんから見て一連の出来事をどのように思いましたか。

 私としては、第三者委員会から指摘されたことがすべてだと思っています。世間の声に対して、敏感に耳を傾けていなかったというレピュテーションの配慮と、子会社に対してのガバナンスが足らないというご指摘ですね。

 世間一般のチケットの二次流通については賛否両論だと思っています。実際チケットキャンプがなくなって不便だという声もあれば、二次流通のやりとりではアーティストや主催者にお金が回らないという意見もあります。

 米国では一次流通の段階からダイナミックプライシング(※需要と供給などに合わせて、価格を柔軟に変動させる制度)で販売していますし、飛行機のチケットがイメージしやすいですけど、変動するのが当たり前の文化として定着しています。でも国内の、特に音楽ライブを中心に、一次流通が一律の価格になっていて、二次流通だけ変動相場が根付いている現状があります。そのような環境にあることから、二次流通のブローカーだけが利潤を得ているというイメージが付いています。こうなると、一次流通とセットで変えていかないと難しいです。

 さまざまな動きや意見もありましたが、タッチポイントとなっているのはエンドユーザーであり、そこでの批判が圧倒的な民意になってくると思うので、そこに耳を傾けて対策をしていくことが、もう少しできていたらよかったと思っていますし、コミュニケーションを標榜する会社であれば、なおのことだったと思っています。

――5月の決算会見では、コミュニケーションサービスを軸にしていく方針として打ち出していました。

 まずやらなければいけないこととして、ミクシィとは何者で、ミクシィの顧客とは、というのを見つめ直すことでした。

 過去10年の累積営業利益を見たときに、ミクシィというのはSNSのmixiとモンストで大きく成長している企業だと言えます。そして、どういう顧客を対象としていたのかと振り返ると、mixiは最初招待制ではじまったこともあって、リアルな友達や家族に対してのコミュニケーションツールとなっています。モンストもただひとりだけで遊ぶものではなく、またオンラインゲームのように顔の見えない人と遊ぶのではなく、身の回りにいる仲間と一緒に集まることに対して、バリューを出すことを考えて開発、運営をしています。

 私たちがターゲットとしている顧客と、そこで求められているものというのは、仲のいい家族や友だちとのコミュニケーションにあると。そのコミュニケーションから発せられる情報というのは信頼性が高く、バイラルとして広がっていきます。だからこそ、ミクシィは指数関数的な成長ができました。だからこそ、コミュニケーションを規律としてやっていこうと。

 そして家族や友だちとのコミュニケーションというのは、SNSやゲームだけはないはずです。コミュニケーションを軸とした切り口としたならば、ウェルネスやスポーツなど、いろんな市場がありそうというのが見えてきたんです。

 SNSやゲーム、スポーツや健康事業といろいろと手を広げているようにも見えますが、あくまで「コミュニケーション屋」としていこうと。家族や友達とのコミュニケーションをいかに充実させていくか、そしてITの進歩、社会の変遷によって失われていくコミュニケーションを、いかに取り戻していくか。そこにフォーカスした会社にすると。変えていくところは変えていくが、コミュニケーションという軸は変えないスタンスにしています。

――少し前からスポーツ領域へ参入していますが、改めて狙いを教えてください。

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