「ルンバ」が家族の一員になるまで--CEOが紆余曲折の歩みを語る - (page 5)

Colin Barker (ZDNet UK) 翻訳校正: 川村インターナショナル2018年06月27日 07時30分

 それからしばらく、異例な日が続きました。あちこちのお店から、商品を送ってくれと電話がかかってきたのです。こんなことは初めてだと言われました。普通は、こちらから店舗に出向いていって、商品を置いてもらえるように頼み込むものですから。そういう電話に応対するために窓口を増やしたほうがいいとも指摘され、インターンを雇うことになりました。

 まさに異常事態でした。ロボットが故障したらどうなるかということも、理解していく必要がありました。返品のときの対応は、それまで分かっておらず、また今でも奇妙に思うことがあります。ルンバを買った人のうち90%以上が、名前を付けているからです。ロボットに、名前を付けるんですよ。

 交代で電話に応対しましたが、ときには、変わった会話もありました。ルンバが故障したという電話があれば、当社へ送る方法を説明します。その上で、代替機を届けるのですが、説明を聞くと、「いや、うちの『ロジー』を送り返すなんて、とんでもない」などと言う人もいます。

 医者の往診のようにルンバの「手術」をしに来てほしい、ということでしょう。不思議な会話ですが、われわれにとっては興味深いことです。

 今では会社も大きくなりましたが、ずっと順調だったわけではありません。2002年には、7万台が売れました。素晴らしいと思い、誰もが期待に胸を膨らませていました。翌2003年には25万台製造し、すごいことになると予想しました。でも、そうはなりませんでした。

 感謝祭が終わり、ブラックフライデーも終わったところで、まだ21万台も在庫が残っていたのです。「あぁ、ここまでか」と思いました。実は、それまで何も宣伝をしていませんでした。宣伝というものを信じていなかったからです。なんとなく、宣伝はきれいじゃないと考えていました。

 そこで、集まって対策を話し合いました。ブラックフライデーとそのあたりの期間を振り返っていたところ、ある営業担当者がたずねました。「昨日、売り上げが3倍になったのはなぜでしょう」、と。誰も答えられません。

 理由の1つはテレビCMでした。ただし、特別なイベントでのCMです。スーパーボウルの放送中に流された有名なPepsiのCMがあるのですが、1台のロボット掃除機がズボンを吸い込むというCMで、これの影響で当社の売り上げが3倍になったのです。同じような効果があるCMが、ほかにもありました。そのおかげで、当社は窮地を乗り越え、発展できました。

 ほかにも、学んだ教訓があります。成功するには、ルンバを機械のように見せることが重要だということです。かわいい外見だと、ユーザーはおもちゃだと思ってしまうと、調査でも分かっていました。

 ところが、機械っぽく、便利な工業製品のように見せても、やっぱりユーザーは名前を付けます。ユーザーにとっては、ペットのようなものだからです。役に立つ機械のペット。それでも、間違いなくペットなのです。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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