その質問に答えるため、「いくらなら払ってもいいと思うか」と尋ねました。当時のロボット開発費用は高額だったので、5000ドルを払ってでも手に入れたいかどうかを尋ねていたのです。答えは決まってノーで、5000ドルあれば誰かを雇うと言っていました。
それからの年月で、iRobotではいくつかの興味深いことを手がけました。われわれはJohnson Waxという家庭用洗剤などを製造販売する企業と提携しました。Johnson Waxの方から、スーパーやショッピングセンターの床の掃除を助けてくれる製品を作ってほしい、という話がありました。われわれはそれを引き受け、ショッピングセンターの中を動き回って床を掃除する巨大なロボットの開発に着手しました。
この取り組みは実現しましたが、成功とまではいきませんでした。理由を話せば長くなりますが、最大の要因は、Johnson Waxと、同社の顧客の間で突然利害の衝突が発生したことです。ショッピングセンターの清掃業者は、自分から仕事を奪う製品に取り組みたいとは考えません。ですが、この過程で当社は掃除の手法を学びました。
われわれはロボットを熟知していましたが、掃除に関する専門知識はありませんでした。ですが、Johnson Waxが清掃の手法をわれわれに教えてくれたのです。昔、「たまごっち」というゲームがあったことを覚えていますか。デジタルのペットを育てる小型の液晶ゲームで、ユーザーはボタンを押して餌を与える必要がありました。たまごっちはしばらくの間、大ヒットしていましたね。
われわれはたまごっちを見て、最初はばかげていると思ったのですが、発想を変えて、それをビデオゲームのペットとみなすようになりました。それから、自分たちが本物のロボットペットを作ったらどうだろうか、と考えました。最初にロボットの人形を作り、それをさまざまなおもちゃ会社に見せたところ、「素晴らしいとは思うが、私たちが本当に求めているのはロボットの赤ちゃんだ」と言われました。そこで、われわれは玩具メーカーのHasbroと提携することにしたのです。提携は約3年半続きました。なかなか良いおもちゃをいくつか作り、一定の成功を収めることができました。ですが、もっと重要なのは、Hasbroのおかげで、中国で最高の工場をいくつか訪れ、非常に低コストで製造する方法を学べたことです。
3つ目の興味深いことは、われわれが米国防総省と協力して、地雷除去ロボットを開発しようとした取り組みのことです。正確に言うと、われわれが取り組んでいたのは、一点も見落とさずに地雷原をくまなく調べることのできるロボットを作る方法です。
そうして、われわれは、ロボットが与えられた範囲をくまなく調べることを可能にするAIシステムを開発しました。この取り組みが終わった後、自分たちが、掃除の手法とコストの問題、そして掃除の「範囲」の問題をクリアできたことに気づいたのです。ある日、エンジニアの1人が私のところへやってきて、「Colin、これでノウハウがそろったのだから、消費者向けロボット掃除機を作ろう」と提案しました。
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