“日本対応”がカギに--スタートアップ3社が語るAzure活用のポイントと選択理由

 5月に東京都内でデベロッパー向けイベント「de:code 2018」が開催された。日本マイクロソフトがもつ開発用のソフトウェア、クラウドサービス、プラットフォームにおける最新事情や今後の展開が語られる同イベントでは、新たなコラボレーションツールやオートメーションツールなどを発表。デベロッパーオリエンテッドな取り組みをさらに加速、発展させていく姿勢を見せた。

Developer Division副社長を務めるMicrosoftのJulia Liuson氏(右)とスタートアップ3社
Developer Division副社長を務めるMicrosoftのJulia Liuson氏(右)とスタートアップ3社

 こうした中、日本国内のスタートアップ、ベンチャー企業においても、マイクロソフトのツールやプラットフォームを活用する例が着実に増えてきているようだ。これまで他社プラットフォームを採用していたにもかかわらず、乗り換える企業も出てきた。具体的にどんな形で活用しているのか、また、なぜマイクロソフトのプラットフォームを選んだのか、スタートアップ3社の話を聞いた。

AWSからAzureへ、バックエンドでの移行が進む理由

 法人向けの営業支援をはじめとするBtoBビジネスを展開するイノベーションは、これまでバックエンドで使用していたAmazon Web Services(AWS)をMicrosoft Azureプラットフォームに全面移行している最中だという。例えば同社サービスのうち、マーケティングオートメーションを実現するクラウドサービス「ListFinder」では、すでにバックエンドの大部分をAzureが担っている。

イノベーション 技術開発本部 エキスパート 矢ヶ崎哲宏氏
イノベーション 技術開発本部 エキスパート 矢ヶ崎哲宏氏

 「Web Apps」で作成されたフロントエンド、管理サイト、バッチシステムなどが「Azure Container Registry」で構築され、各々Dockerによる独立した実行環境を構成。これらの背後にはストレージとデータベースを提供する「Azure Storage」「Azure Database for PostgreSQL」が稼働しており、各システムは「Azure Monitor」で監視されている。また、アクセス解析やListFinderのサービス利用者へのシステムアラートは、サーバーレススクリプト実行環境の「Azure Functions」で実装している。

 同社技術開発本部の矢ヶ崎氏によると、Azureは「3、4年前とは全く別物になっている」とのこと。当時のAzureは「ロール」と呼ばれる仕組みが用いられ、バックエンド用のシステムとしては柔軟性に欠けるところもあったが、現在では仕様が大きく変わっている。人工知能APIである「Cognitive Services」も充実しており、「AWSに負けていない」と同氏。またAWSでは、AWSがカバーしていない部分は他のベンダーのさまざまなツールを組み合わせて使う必要もあり、運用負荷や安定性の面ではデメリットもあった。「いかに人の手をかけず、ミスをなくしていくか」(矢ヶ崎氏)を目指すには、Azureのようなプラットフォームを採用してPaaS化を進めるのは必然だったというわけだ。

イノベーションが手がける営業支援の仕組み
イノベーションが手がける営業支援の仕組み
「ListFinder」のシステム概要図
「ListFinder」のシステム概要図

 システム開発、コンサルティング等の受託事業のほか、ユーザーが自由に配合したオリジナルの料理用ソースを作って購入できる「マイソースファクトリー」を自社運営するオルターブース。同社は2015年の創業当初からAzureをはじめとするマイクロソフトのプラットフォーム製品を積極的に採用してきた企業だ。マイソースファクトリーのバックエンドでは、アプリケーション実行基盤として「.NET Core 2.0」を採用し、フロントエンドは「Web Apps」と「Azure Container Instances」で構成している。

オルターブース 業務執行役員 CTA 松村優大氏
オルターブース 業務執行役員 CTA 松村優大氏

 Azureを採用している理由として同社創業メンバーの1人である松村氏は、複数の必須サービスからなるPaaSだからこそのサービス継続性の高さ、大規模サービスをパーツ化するマイクロサービスの実現の容易さ、という2点を挙げる。また、「Visual Studio Team Services」による継続的インテグレーションに加え、「2つの組み合わせが非常に強力」と同氏が話す「.NET Core」と「Visual Studio」による開発で、生産性高く高品質なアプリが作れるのも大きなメリットだと話す。

「マイソースファクトリー」のシステム概要図
「マイソースファクトリー」のシステム概要図
AzureやVisual Studio Team Servicesなどのメリット
AzureやVisual Studio Team Servicesなどのメリット

 クラウドキャストもAzureに全面移行したデベロッパーの1つだ。企業向けのクラウド経費精算サービス「staple」を運営し、Suicaなどの交通系ICカードのデータを同サービスに連携する「Staple リーダー」アプリをリリースしている。同社では、このアプリのバックエンドをAzureに完全移行したうえで、ICカード内のデータを読み込んだ際に、正しい駅名へ変換する処理にAzureを利用している。また、日本企業ならではの慣習として必要になる、交際費を精算する際の同席相手の名前、会社名表示に「Azure Active Directory」を用いているという。

クラウドキャスト 代表取締役 星川高志氏
クラウドキャスト 代表取締役 星川高志氏

 元々マイクロソフトに十数年間在籍していたという同社代表取締役の星川氏。stapleは、当時社内で利用していた経理精算ツールの「MS Expense」に大きな不満があり、「それをずっと変えたいと思っていた」という気持ちが開発のきっかけになったという。しかし、マイクロソフトに在籍していたこととは無関係に、Staple リーダーのAzureへの移行におけるサポートや、日本国内におけるマーケティングや販売チャネルといった営業的な部分での支援が「AWSとは歴史の差がある」と同氏。スタートアップやベンチャー企業を手厚くバックアップする日本法人の存在が、他社にはない大きなメリットだと強調する。

クラウド型経費精算サービス「staple」を運営する
クラウド型経費精算サービス「staple」を運営する
各サービスで使用しているプラットフォーム
各サービスで使用しているプラットフォーム
「Staple リーダー」をAzureに完全移行した
「Staple リーダー」をAzureに完全移行した

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