4月末から5月の頭にかけて、携帯大手3社の2017年度通期決算が発表された。各社ともに好調な業績を記録し、2018年度に向けた取り組みを打ち出しているが、一方で携帯電話市場は飽和状態であり、従来通りの事業では成長が見込めないのも事実。各社はどのような考えをもって、2018年度以降の成長を実現しようとしているのか。決算内容から振り返ってみよう。
NTTドコモの2017年度通期決算は、営業収益が前年同期比4%増の4兆7694億円、営業利益が3%増の9733億円で増収増益となった。増収要因は主力の通信事業であり、「ドコモ光」など固定回線サービスが伸びているものの、利益は横ばい。一方でスマートライフ領域は、グループ会社の取引形態変更が大きく影響して売り上げこそ伸びていないが、事業自体は好調に推移。コスト効率化の進展もあって利益は年間予想を超える1405億円を達成するなど、増益に貢献している。
今期も増収増益を達成したドコモだが、足元の環境は必ずしも安泰ではない。他キャリアのサブブランド攻勢などによって、大半がドコモのネットワークを利用しているMVNOの伸びが大きく落ちており、第2四半期には契約数の下方修正を打ち出している。MVNOの競争力低下を受けてか、ドコモも今回の決算発表に合わせて、段階制の料金プラン「ベーシックパック」「ベーシックシェアパック」を打ち出すなど、低価格を求める層の維持に苦心している様子が見える。
しかも今後、契約数が増える可能性があるのは、通信料金が非常に安いIoT向けの通信モジュールくらいであり、携帯電話中心の事業を展開していても大きな成長を見込むことはできない。そのためドコモは、2018年度以降の業績向上を見込んで、事業基盤を携帯電話回線から、ポイントプログラムの「dポイント」に移すとしている。
dポイントはキャリアに閉じられたものではなく、さまざまな企業が利活用できる共通ポイントプログラムとして展開されている。そこでdポイントを介してキャリアに縛られない会員獲得につなげつつ、会員基盤とポイントプログラムで獲得したデータを活用したデジタルマーケティングプラットフォームを展開するなど、新たなビジネスに結びつけることも考えているようだ。
事業基盤をdポイント主体にすることは、確かに顧客とビジネス機会を広げる上では大きな意味を持つ。だがそこには、携帯電話事業に参入した楽天の「楽天スーパーポイント」をはじめ、多くのポイントプログラムが競合として立ちはだかることとなる。ドコモにはそうした多角的な競争に対応できる体制作りが、今後大きく求められることになるだろう。
また同社の動向関して気になるのは、ここ最近端末製造で関係を密にしてきた中国のZTEが、米国政府から事実上の制裁を受け、主要事業が運営停止となっていることだ。この点に関して、同社代表取締役社長の吉澤和弘氏は「調達済みの端末は販売できる」としながらも、新規端末の開発に関しては停止している状況で、大きな懸念となってくる。
一方でドコモは5月16日、ファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」の販売を発表するなど、一時は端末面で距離を置いていたファーウェイと、再び接近する動きを見せている。もしZTEに対する制裁が長引けば、今後ファーウェイからの調達を拡大する可能性も大いに考えられそうだ。
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