私が2010年にiPhoneを購入して初めてAppleの顧客になってから、同社が私について収集したすべての情報を開示するようAppleに先週求めた。
Facebookのデータを不正流用していたとされる英国の政治コンサルティング会社Cambridge Analyticaの騒動では、IT企業がユーザーの情報をどれほど多く収集しているかが明るみになった。ではAppleの場合はどうか。調べてみたら、これが思ったほど多くの情報を収集していなかったのである。
情報開示を求めてからAppleから回答をもらうまでに要したのは1週間。データは20枚超の「Excel」のスプレッドシートに書かれ、その容量は5Mバイトだった。
どのファイルにもテキストメッセージや写真などのコンテンツそのものの情報はなく、私がいつ誰にメッセージを送ったり、FaceTime通話をしたかのメタデータが書かれていた。
Appleは収集した個人情報はユーザー本人のものだとしているが、現在はその内容を積極的には開示していない。しかし、欧州連合(EU)のデータ保護のガイドラインに従う目的から、5月より一部のEU諸国を皮切りに、ユーザーが自分のデータのアーカイブをApple IDのページからダウンロードできるようになる。また、「Siri」や「Maps」などのために収集する情報は匿名化されている。
受け取ったデータの中に、各データフィールドの説明が書かれたスプレッドシートがあったのでDocumentCloudにアップロードした。これをみると、Appleがどのような情報を収集しているかを垣間見ることができる。
最初のフォルダをみると、複数のスプレッドシートにデバイスやコンテンツの利用状況が書かれていた。詳しくは以下の通り。
- AccountDetails.xlsx:アカウント保有者の基本情報。氏名、住所、電話番号、Apple IDなど。またアカウント作成日やアカウント作成時に使われたAppleのサーバのIPアドレスも書かれている。
- iCloudLogs.xlsx:iCloudからのデータダウンロードの履歴。フォトライブラリや連絡先、Safariの閲覧履歴も記録の対象に含まれるが、コンテンツそのものは含まれない。
- MailLogs.xlsx:iCloudのメールアカウントへのアクセス記録。メールの中身そのものは記録されていない。
エンドツーエンドで暗号化されるメッセージアプリ「FaceTime」と「iMessage」に関するファイルもあった。暗号化されているので内容そのものにAppleがアクセスすることはできないが、通話やメッセージが同社のサーバをどうルーティングされたかが分かる。
以下がその1例だ。
また、これとは別のフォルダには、私とAppleの間でのやりとり(ダウンロードやサポート依頼など)が記録されたExcelファイルが複数入っていた。
- AOS Orders:初めてAppleの製品を買ってから今日に至るまでの、私が購入した端末やアクセサリの履歴。
- CRM Installed Product:購入したApple製品の一覧。シリアルナンバーやBluetoothのMACアドレス、EthernetやWi-Fi接続など、端末の特定につながる情報が詳しく書かれている。
- CRM AppleCare Case Contact:アカウント保有者の基本情報。氏名、住所、電話番号など。また、営業のメールや電話を受け付けるかどうかも書いてある。
- CRM AppleCare Case Header:私とカスタマーサポートとのやりとりの記録。
以下がCRM AppleCare Case Headerの詳細だ。
- CRM Warranty:AppleCareの保証範囲や有効期限など、所有する端末の保証に関する情報。
- DS Signons:iTunesのログイン記録。利用した端末のほか、ログインに失敗したことも記録される。
- Game Center:ユーザーが利用したゲームのセッションに関する情報を記録するためのものと思われるが、私のファイルに書かれた情報は限りなくゼロに近い。
- iForgot:ウェブのApple IDページへのアクセス記録。またパスワードをリセットした際もここに記録が残る。
- iTunes Match Uploads:iTunes Matchにアップロードした楽曲の記録。また端末の特定につながる、ユーザーエージェント情報も書かれている。
- iTunes Match Downloads:iTunes Matchからダウンロードされた楽曲の一覧。
- iTunes Downloads:アカウント開設以来のすべてのダウンロード履歴。 iTunes Storeからのアプリ、楽曲、アルバム、ビデオ、映画のダウンロード状況が記録される。またダウンロード先の端末と、そのIPアドレスも記録される。
- Repair Transaction Details:Appleへの修理依頼状況。不具合の内容やAppleスタッフのメモ、端末の特定につながる情報(iPhoneのIMEI番号)などが書かれている。
- Marketing Contact:マーケティング目的で連絡をとりたいときの連絡先が書かれている。また、開発者アカウントの保有状況など、マーケティングの対象になった理由も書かれている。
以上が、私に引き渡された情報だ。思ったより情報が少ないというのが感想だ。Appleはハードウェアメーカーであって、FacebookやGoogleのように広告ベースのビジネスをしていないからかもしれない。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」