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野球選手育成に人事評価制度--徳島インディゴソックスとあしたのチームに狙いを聞く

佐藤和也 (編集部)2018年03月26日 09時00分
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 スポーツの選手育成にHR Techを活用した人事評価制度――。一見するとミスマッチに思えるような取り組みが芽生え始めている。人工知能(AI)を活用したクラウド型人事評価システムの導入支援を手掛けているあしたのチームが、野球の独立リーグ、四国アイランドリーグplusの徳島インディゴソックスに人事評価システムを導入したのは2016年7月のことだ。

 徳島インディゴソックスは2005年に発足。近年はNPB(日本野球機構)のチームからドラフト指名を受ける選手を輩出しているほか、2017年シーズンはリーグの前期優勝ならびに総合優勝を果たした。さらに、ベースボール・チャレンジ・リーグの優勝チームと対戦するグランドチャンピオンシップでも勝利し、3年ぶり2度目の独立リーグ日本一を獲得したチームでもある。

 この取り組みは、人事評価制度を球団スタッフではなく選手に対して取り入れたのが特長。同社でもスポーツ分野は初めての取り組みだったという。その後、徳島インディゴソックスでのノウハウや、導入以降に好成績をあげたこともあってか、スポーツ分野での導入は約50案件まで増えたと説明する。

 球団としても独立リーグで活動していることから、若手選手の育成のみならず、社会人としても育成する必要性を強く感じていたことが、背景にあるという。

 球団を運営するパブリック・ベースボールクラブ徳島 代表取締役の南啓介氏と、人事評価システムの導入を担当したあしたのチーム 営業本部 三好ランド マネージャーの西村耕世氏に、この取り組みの背景や成果について聞いた。

パブリック・ベースボールクラブ徳島 代表取締役の南啓介氏
パブリック・ベースボールクラブ徳島 代表取締役の南啓介氏

在籍期間が1~3年の独立リーグ選手事情と社会人教育の必要性

--まず、選手に対する人事評価制度導入の経緯を教えてください。

南氏 :共通の知り合いを通じて、高橋さん(あしたのチーム代表取締役社長の高橋恭介氏)とお会いしたことがきっかけです。徳島県三好市にあしたのチームのサテライトオフィスがあることから、地域振興の観点からチームのサポートをしたいというお気持ちとともに、人事評価制度が確立されていないスポーツ分野にも進出したいという意向を伺いました。

 私は、かねてから選手に野球だけではなく社会人としての教育が必要だと感じていたところがありました。どういうものを活用すれば、より効果的なのかを探していたときにお話をいただいたんです。双方の思惑が一致したのが経緯になります。

--社会人としての教育が必要ということですが、その背景はなんでしょうか。

南氏 :プロスポーツ選手自体、そう長くできることではありませんし、路頭に迷う選手の姿も見てきました。特に独立リーグの選手のほとんどは1~3年しか在籍しません。NPBに進む選手も一握りしかいませんから、彼らの今後の人生を考えると、短い期間でも成果が出せる仕組みを求めていました。

--一般的な企業ではなく、スポーツ分野に人事評価制度を導入するにあたって、どのようなところに違いを感じましたか。

西村氏 :一般的な企業であれば、人事評価制度は給料に紐づけていくものです。ただ今回はあくまでも教育のためであって、直結したものではない。この部分に関しては年棒査定の反映はしないことにしていますし、それがこれまでとは違ったところです。

 当時南さんがよくお話していたのは、「選手1人につき100人のファンを付ける」でした。球団の財政にもかかわることでもありますが、選手を応援することが、球団を応援することにつながり、徳島としてみんなで盛り上げようという雰囲気につながっていく。短い言葉ですけど、いろんな思いが込められていると思いましたし、スポーツチームだからこその発想であって、驚きと新しい発想だとおもいました。

南氏 :毎試合ちゃんとお客さんを呼べるような選手になってほしいというのもありますし、それぐらいのファンがいたら、選手を応援するための発想というのもさまざまなものが出てきます。それを通じて選手を応援しようという気運も生み出せます。この2つの観点から、1人に付き100人のファンが必要という感覚があって、そのように話しました。

 もちろん球団運営にとっても重要です。選手に対しては数字ありきで話します。プロとしてお金をもらう以上は、それに見合った稼ぎをしないといけないという話はしますし、球団の運営資金の割り振りや、選手にかかるコスト、一試合開催するにあたってのコストをはっきり示して、どれぐらいのファンが試合に足を運んでもらうと運営が成り立つかといったことも伝えます。

--独立リーグのチームでは、コストに関することを選手に話すものなのでしょうか。

南氏 :他のチームのことはわかりませんが、うちではそうしています。2015年12月に代表として就任したのですが、そのとき感じたこととして、スタッフと選手双方にコスト意識の低さがあったのです。それまでは大口のスポンサーがついていたという事情もあったかもしれません。私としては、コスト意識を持つのは球団存続だけではなく、 社会人の素養を身に着けるうえでも重要だと考えているので、選手たちにはかなり細かいところまで話してます。

--人事評価制度における行動目標を選手向けに落とし込む際、どのようなことを考えたり話し合いながら決めていったのでしょうか。

西村氏 :ファン作りを第一に、ということで「親密性」「誠実さ」「自律志向」「徹底性」「ビジネスマナー」「理念・方針の共有」の6項目を設定し、これに沿った行動目標を立ててもらうことにしました。球団が試合や練習だけではなく地域貢献活動もされているなかで、徳島に球団があることの意義を選手ひとりひとりが作り出していく必要があります。そのために地域のみなさま、ファン、そしてスポンサーに応援してもらうにはどうしたらいいのか、何ができるのかと第一に考えました。

現在の徳島インディゴソックスにおけるコンピテンシー
現在の徳島インディゴソックスにおけるコンピテンシー

 やはり応援されてこそのプロスポーツ選手であり、そのうえでいいプレーができて、プロへの道が開かれると。もちろんプロに進んだとしても、応援し続けるみなさんを大切にしないといけません。それが人間形成の面においても重要です。それこそプロ野球選手を目指す方が、大学に行き野球をするのであれば、野球ができて人間形成もできる球団に来てほしいという願いも込めて、項目設定をしていったように記憶しています。

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