AIは導入するだけではなく、その運用方法が正しくなければ効果を生まない。NECが考えるビジネスを変革させる方法とは──。2月に開催した「CNET Japan Live 2018」で、NEC デジタル戦略本部 本部長の中尾敏康氏が"AIが加速するデジタルトランスフォーメーション〜お客様との共創事例〜"と題し講演した。
NECが考えるデジタルトランスフォーメーションとはなにか。デジタル技術を活かし、企業や産業、都市、人に活力を生み出すことだという。
中尾氏は「実世界でデータを取得し、"見える化"する。それを分析し、予測して的確に手を打つことがICT(Information and Communication Technology)の提供する部分。これにより、実世界のヒト・モノ・コトに新たな意味を加える。企業や都市をマネージする」と説明。「デジタルトランスフォーメーションは新しい技術ではない。ICTを使ってビジネスのやり方をどう変えるかということだ」と述べた。
デジタルトランスフォーメーションでは、「なにを変革するのか」「誰の視点で変革するのか」という視点で変革のポイントを捉え、「エクスペリエンス」「ビジネスモデル」「ワークスタイル」「オペレーション」の4つがあると定義した。
続いて、"エクスペリエンスの変革"の事例として、NEC社内での事例が紹介された。社内で取引企業に情報データを提供するとき、どのような情報を提供するかをAIを活用して分析している。社員の勘に頼っていたところが、AIの活用で潜在顧客を高精度に予測したため、潜在顧客の抽出精度が4倍になった。
また、ある航空会社における事例では、会員のアクセスログをAIで解析することで、航空券の購入予測やマーケティングの知見を得ている。「お客様の視点で言えば、最適なタイミングでお得な航空券が提示されるようになる」。これは、後述するホワイトボックス型のNECの技術で行われているとのことだ。
"ワークスタイルの変革"の事例も紹介された。ある金融業の変革では、報告書などの書類をRPA(Robotic Process Automation)に置き換えることにより、職員の生産性が向上できるだけでなく、人為的ミスの防止も目指している。中尾氏は「この施策はNEC内部でも行っている。NECではAIも組み合わせて、チェック業務を自動化した。これは伝票処理が70%削減できたということだけではない。単純な作業に従事していた人たちをより提供価値の高い業務へシフトすることができた。これは企業的な価値が上がり、従業員一人ひとりが仕事にやりがいを感じるというメリットもある」と説明した。
"オペレーションの変革"では、NECで行っているBTO(Build To Order)製品の部材在庫管理についての事例が紹介された。部品の在庫がどれぐらい必要かをAIで需要予測することにより、欠品による生産の不安定化がなくなり、BTO品の部材在庫を45%削減。「余剰在庫を削減することで、NECとサプライヤーの関係も良好な関係を構築できた」という。
ある製造業の事例では、品質検査業務をAIで行った。それまで熟練の社員によって難しい検査を行っていたが、そうした高度な技術を持つ人材が不足していたため、安定した検査を行うことが難しくなっていたという。その部分に、NECのDeep Learning技術であるRAPID機械学習や画像解析技術を用いることで、検査費用を60%削減可能という試算結果が得られた。「この事例でも、費用の削減以外に、人材不足や技術継承問題も解消にも役立っている。より価値の高い方へ人的リソースをシフトできている」。
”ビジネスモデルの変革"の事例では、日揮株式会社とNECの共創事例が説明された。NECがプラントの異常予兆を検知する「インバリアント分析技術」を提供し、日揮のプラント建設ノウハウを組み合わせて、新たなビジネスを2017年2月より開始している。
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