角川ドワンゴ学園が運営する「N高等学校」(N高)は2月5日、高校生が起業家を目指すことを目的とした「N高起業部」の設立を発表した。デロイト トーマツ ベンチャーサポートが外部協力者として加わり、実践的なプログラムを提供するほか、部の活動費として年間最大1000万円の起業支援金を用意し、費用面でのサポートも行うという。
N高起業部は、N高・通学コースで行われているプロジェクト型学習「プロジェクトN」に取り組んできた生徒のうち、同日付で開催された特別審査会の審査を突破した生徒たちが起業を目指す部活動。高校生が起業家を目指すことでイノベーティブな考え方を学び、日本や世界を支える人材の育成を目的としたもの。
起業部の顧問を務めるN高等学校の鈴木健氏は、高校生が「リスクがあっても高い目標にチャレンジする仕事がしたい」という意識が高まっている調査結果を提示した一方で、高校卒業後の選択肢は、事実上「進学」と「就職」に2極化している現状を踏まえ、そこに「起業」という進路を新たなスタンダードにしていくという。
特長として「専用プログラム」「プロフェッショナルチーム」「起業支援金」の3つを挙げる。ビジネスモデルの構築から資金調達、登記手続きといった起業家を目指すうえで必要となる専用プログラムを用意。また前述のようにデロイト トーマツ ベンチャーサポートがプログラムを提供し、起業家精神を高めるためのメンタリングを重視した活動を行う。そしてプロトタイプ制作やマーケティングリサーチ、法人登記費用など、起業に向けた活動費をサポートする起業支援金も用意する。
今後のスケジュールとして、2~3月にかけて、事業計画書立案、市場分析、競合分析などといった全6回の講義を実施。4~7月にかけて、全2回による起業家からのアントレプレナーシップを学ぶ特別講演と、約50時間ほどの個別メンタリングを行う。そして、8月には、投資家やベンチャーキャピタルへのプレゼンテーションとなるピッチイベントの参加を予定している。
N高等学校の校長を務める奥平博一氏は、ネットの普及で世界中の情報が得られる環境になったことに触れつつも「情報をもとに、自分なりの創造力や、自ら主体的に動くこと。何より挑戦する気持ちがなければ、価値を生み出さない」と前置きしたうえで、「高校生のような若い世代が、突拍子もないようなことを具現化するべくどうするかを考えるのは大切なこと。失敗を恐れず自分なりの考えを貫き通してほしい」と語る。
デロイト トーマツ ベンチャーサポート 事業統括本部長の斎藤祐馬氏は、「ビジョンとパッションを持った挑戦者が、世の中を変えると信じている」と語り、目指すべきビジョンと、推進力となるパッションが大切だと改めて説明。一人でも多くの起業家が生まれるようサポートするとした。
発表会では、特別審査会の審査員を務めるカドカワ代表取締役の川上量生氏、ドワンゴ取締役の夏野剛氏、SNS media & consultingファウンダーの堀江貴文氏も登壇し、それぞれが起業部に対してコメントした。
川上氏は、若い人の起業に対して「取り返しのつかないことになりやすい」として、慎重な姿勢を示しながらも、会社における新規事業の立ち上げやプロデューサーとして活動することなど「起業しなくても、起業する能力、センスは必要」だと語る。高校生の段階から、広い目で物事を見て経験することは大事であり、さらに学生のような“若すぎる”段階であれば、仮に失敗しても失うものよりは、経験になることのほうが大きいとした。
夏野氏は、21年前に起業して失敗した経験に触れつつ、昨今では大企業に属していてもすべてを失うような出来事もあるとして「今は、早い段階で起業を経験することが重要な時代になっている」とコメント。さまざまなジャンルで10代が活躍していることや、起業において日本は上場しやすい国であることに触れ、「学生ぐらい若いうちなら、失敗してもひどいことにはならない。ホームランか三振かを狙うぐらいに、思いっきりやってほしい」とした。
堀江氏は冒頭「なんでここに呼ばれているのか、さっぱりわからない」とコメントしつつも、「10歳ぐらいになると、スマートフォンやSNSなどテクノロジの力で、大人と同じバーチャルな体を手に入れられる」とし、10代でも働き盛りと呼ばれる人たちと近いことができるようになるぐらい、年齢的な壁はなくなっていることを説明。10代で起業し大きな成果をあげた海外での事例も出し、「10代は、より可能性があり何回でも失敗できる。頑張ってほしい」とエールを送った。
【2月6日2時追記】記事初出時、奥平博一様ならびに斎藤祐馬様のお名前を誤表記しておりました。関係者の皆様にご迷惑をおかけしたことを深くお詫びし、訂正いたします。
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