シェアゼロは12月19日、起業をしたい人と、起業を尊重してくれる会社をマッチングする転職サービス「起業転職」のベータ版を公開した。2018年度末までに、30名のマッチングを想定しているという。
起業転職は、起業をしたいけれど現職では副業が禁止されている人や、家族を養うために安定的な収入がなければ起業が難しい人などに対して、起業を事前に承認している企業への転職を支援するサービス。企業側も、新規事業担当や専門スキルを持つ人材を見つけやすくなるというメリットがあるという。
「日本では退路を断って起業するという選択肢しかないうえに、失敗するとなかなか再挑戦できない。(起業転職によって)“サラリーマン起業”をして挑戦することを尊重したり応援したりしてくれる会社への転職をサポートしたい」──。シェアゼロ代表取締役の中川亮氏は、同サービスによって日本における起業のハードルを下げたいと話す。
中小企業庁が発行する「中小企業白書(2017年版)」によると、日本における起業(開業)数は1997年をピークに年々減少しているという。また、同庁発行の「平成29年度以降に向けた創業・起業支援について」では、起業が増えない原因として、創業を考える人そのものが少なく、資金の問題を乗り越えられないことを挙げている。
しかし実際には、日本でも終身雇用制度が崩壊しつつあることから、起業を希望する人は増加傾向にあるものの、「資金以外にも家族の反対や立ち上げノウハウの欠如などを自覚し、気軽に相談できる場所や仲間がいない」といった複数の要因が、最初の一歩を妨げていると中川氏は指摘する。
また企業側も、新規事業開発や専門職の採用、国際競争力や労働生産性の向上などに課題を抱えているが、通常のルートではなかなか即戦力を採用できないという現実がある。そこで企業も、将来起業という目標を持つ人材を積極的に採用して支援することで、在職時のスキルアップによる事業への貢献だけでなく、起業後の業務連携なども見据えた人材活用が期待できると説明する。
「優秀な人材を見つけるために、大手企業などはCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)を設立したり、オープンイノベーションのプログラムを立ち上げたりするが、大掛かりでコストもかかる。しかし、起業転職で優秀な人材が入社してくれれば1人分の給料しかかからない。業務委託だと重要な仕事は任せられないこともあるが、社員として採用するので新規事業も任せられる」(中川氏)。
起業転職では、シリコンバレー発の「リーンスタートアップ」を日本で啓蒙してきたLean Startup Japan代表社員の和波俊久氏が監修し、リーンスタートアップの思考を軸に「起業家として自ら成長できるメカニズム」を備えた起業家育成プログラムを提供するという。
具体的には、(1)起業と転職をワンストップで支援 、(2)起業を尊重してくれる会社への転職を支援(企業と事前に事業内容や方向性の共有・方向性のすり合わせ)、(3)現役の起業家によるサポート、という3つの支援をする。また、中川氏や和波氏に加えて、実際にサラリーマン起業を経験している人をアドバイザーとして呼ぶ予定だという。
「起業したての1年目が一番大事。当初はよく分からないままお金を使ったり、無駄なサービスを作ったりしてしまう。(起業転職では)ゼロベースで本当にやりたいことを整理してもらい、マインドの育成や会社設立の準備などを段階的に設計していく」(中川氏)。
ただし、起業した事業が成長するにつれて、“二足のわらじ”が難しくなる人がほとんどだろう。雇用形態については、基本的には起業家と採用企業同士での交渉となるが、同社では半年間の有期雇用にするなど、その都度柔軟に相談できる働き方を提案したいとしている。
すでに東証一部上場企業を含む数十社が、起業転職による受け入れを表明、または検討しているという。2018年度末までに、30名のマッチングを想定しており、その後も起業家と企業の関係を継続的にフォローし、それらの状況を事例記事として発信することで認知を高めたいとしている。
「日本の労働人口は米国の約半分だが、起業する人数は47分の1しかいない。起業家が尊重されずチャレンジがしづらい日本を変えていきたい。多くの企業を巻き込むことで、就職しながら起業することがライフスタイルになるような世の中を作りたい」(中川氏)。
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