2017年のアップルを振り返る--見えてきた5つの数字 - (page 3)

「13」--上昇に転じたiPadの展望

 Appleは2010年に、iPadをリリースし、タブレット市場を牽引する商品であり続けている。しかし2014年第1四半期を境に、iPadの売り上げは前年同期比を下回るようになった。13カ月連続の前年同期比割れとなっていたiPadは、2017年にその下落トレンドに歯止めをかけた。

 iPadがiPhoneのように2年の買い換えサイクルを作り出せなかったこと、もともと性能が比較的高くボディも丈夫で、比較的長持ちすることなどが、「製品の良さ」も低迷の一因だった。

 外部環境も逆風が吹き荒れる。競合となるPC陣営ではMicrosoftがSurfaceシリーズを登場させ、タブレットの軽快さやタッチ操作をPCと融合させる2-in-1スタイル、デタッチャブルスタイルを普及させ、タブレットを中途半端な存在へと追いやった。

 2015年9月にiPad Pro 12.9インチ、2016年3月にiPad Pro 9.7インチをリリースし、これを2017年6月にはiPad Proを10.5インチへと拡大した。クリエイティブツールとして、またPC買い替え需要を狙うiPad浮上の切り札としてiPad Proシリーズを投入したが、まだ結実しているとはいえない。

 しかし2017年第3四半期(4〜7月)決算で、iPadの販売台数は久しぶりに前年同期比を上回り、同年第4四半期も前年同期比増を記録した。iPad低迷が底打ちしたと見て良さそうだが、その原動力となったのは、2017年3月に329ドルと9.7インチモデルではこれまでで最も安い価格で発売したiPad(第5世代)だった。

 iPadは教育市場、ビジネス市場での一括導入デバイスとして人気がある。壊れにくく、メンテナンスコストの低い上、デバイスの使い方を覚えるための教育コストも低い。iOSは無償でバージョンアップでき、Apple製のクリエイティブアプリからビジネスアプリまでを一通り無料で利用できる点もコスト面で有利だ。

 そのため廉価版のiPadは常に需要がある状態だったが、2017年初頭、最も価格が安かったiPad Air 2は世界的に供給不足に陥り、これがiPadの販売台数の伸び悩みの原因だった。AppleはiPadラインアップを整理し、さらに価格を引き下げたiPad(第5世代)を投入したことで、iPadの販売台数を回復させたのだ。

 2018年は、堅調な大量導入を軸にしながら、前述のPCの買い換え市場をいかに取っていくかに焦点が移る。タブレット市場の枠を超え、ノートPC市場でiPad Proを売り込んでいかなければならないことを意味する。現在PC市場では、引き続き2-in-1スタイルに注目が集まると同時に、処理性能を大幅に引き上げたゲーミングPCの分野も活況だ。

 処理能力は比較的高いものの、PCゲームのタイトルがそのまま動作しないiPadが、こうした市場でどのような戦いを展開するのか、注目して生きたい。

「18」--Macの反転攻勢はあるか?

 AppleはMacによって勃興し、iPhoneによって世界最大の市場価値を持つ企業へと羽ばたいた。現在のMacは、iOSとの連携を深めていると同時に、iPhoneのアプリを作るために必須のコンピュータというポジションを得ている。そのため、iPhoneのビジネス、特に後述のApp Storeのビジネスが拡大すればするほど、Macは売れ続けていくことになる。

 しかし、iPhoneのエコシステムでの成長以前からMacを使ってきたユーザーにとっては、ここ数年のMacの停滞を歯がゆく思っているはずだ。MicrosoftはAdobeと連携し、クリエイティブプロをWindowsプラットホームに引き込む取り組みを強めてきた。Adobeは同社のアプリのタッチ対応を進めているが、AppleはMacにタッチディスプレイを持ち込まないとの方針を固めており、対抗策が打てずにいた。

 Appleは2016年10月にMacBook Proを刷新し、その後半年程度で2017年6月にも最新チップセットを搭載するモデルをリリースした。同時にiMacも大幅に性能を引き上げ、VR編集に耐えうるスペックで刷新した。また2017年12月には、最大18コアのIntel Xeonプロセッサへと拡張できる一体型デスクトップiMac Proを発売した。

 最新のプロセッサへの素早い対応と、性能を追求するニーズにしっかりと応えることで、プロユーザー離れを食い止め、Macそのものこれまでのブランドを守ろうとしている。

 ビジネスアプリのクラウド化の進行もあり、MacかWindowsかという選択は比較的自由になっている。そのため、AppleはMacのデザインやテクノロジーの先進性、セキュリティなどをしっかりとアピールすることが重要であり、2018年は、iPhoneユーザーの更なるMacへの取り込みのための施策を見ることができるのではないか、と期待している。

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