“攻め”の商品企画でヒットを生み出す--パナソニック「プライベート・ビエラ」の舞台裏 - (page 3)

設計、音質、デザインのすべてが初めての挑戦

 19Z1のひとり贅沢を実現したポイントの1つはスピーカ部だ。プライベート・ビエラシリーズとしては初めて、取り外しても使える2ウェイスピーカを採用。モニタをはめてパーソナルなホームシアターとして楽しめるほか、Bluetooth機能を備え、スマートフォンなどのワイヤレススピーカとしても使用できる、新タイプのスピーカを生み出した。

 「モニタを取り外して使える別体タイプながら、低音はしっかり出さないといけない。そこがとても大変だった」と、音響設計を担当した滝澤氏は話す。元々ワイヤレススピーカの設計などを手がけていた滝澤氏だが、プライベート・ビエラでは「モニタを邪魔しない」ことはスピーカ設計上の大前提で、スペース上の制約が求められる。

 そこで、スピーカに「Wパッシブラジエータ」と、サブウーファを搭載。下部にスリットを設け、そこから音が出る構造にした。これにより、しっかりとした低音の再生に成功。さらに4cmフルレンジスピーカを左右に2個ずつ、計4個配置。上部は外、下部は正面に向けることで、目の前で視聴している際に、包み込まれるようなサラウンド感を味わえる。


スリットを設け、そこから音が出る構造を採用

 「19Z1の最適視聴距離は約60cm。画面の目の前に座った時に、いい音がするよう少しだけ上部のスピーカを外側に向けている。スピーカの角度は試行錯誤の繰り返しで最適な位置を探っていった。オーディオスピーカ的な考え方をかなり取り入れながら、設計したが、最終的にはオーディオにもテレビにもない、全く違うスピーカに仕上がった」と滝澤氏が話すとおり、ほかにはない構成のスピーカシステムが完成した。

 スピーカ同様に、デザインにも新たな試みが用いられている。60cmの最適視聴距離で包み込まれる音を実現するため、スピーカ全体は左右が内側に向いた、曲面デザインを採用。デザインを担当した杉山氏は「コックピットデザイン」と表現する。

 「自分だけの専用の場所が欲しいという思いを形にした。ひとり贅沢というコンセプトを象徴化するために、両サイドのスピーカが自分を囲い込むようなカーブデザインを採用した。しかし、このカーブを完成させるのがとにかく大変だった」と杉山氏は振り返る。


左右のスピーカが内側を向いた、カーブを描くデザイン

 19Z1のスピーカ部は上から見ると左右が内側を向いた、カーブを描くデザイン。その上にファブリックが貼られた高級感ある仕上がりだ。「カーブ形状のものにファブリックを貼ることがとにかく難しい。筐体にファブリックを貼る工程で、ファブリックが引っ張られ、スピーカの特徴であるカーブに沿わない。解決策を考えるなかで、あらゆるスピーカを研究してみたが、なかなか同様のものがなく、独自のやり方を模索するしかなかった」(杉山氏)と、ファブリックの貼り付けは困難を極めた。

 解決できたのは、ディスプレイの背面にあるバッテリが収納されている突起部が収まる穴をスピーカの上部分に設けたため。本体をくり抜くように設けられたこの穴の周囲に別のリング状のパーツを設けてファブリックを押し当てながら固定した。それにより、美しいカーブを描くスピーカを実現できた。なおかつ、この機構はディスプレイとスピーカの一体感と確実なホールド機構を実現。さらに、スピーカ部へのディスプレイの取り付けやすさにもつながっている。「ユーザビリティと外観を両立するデザインをなんとか生み出せた」と杉山氏は話す。

 全く新しいコンセプトのモデルのため、デザインに入る前の“条件出し”に時間がかかったのも今回ならではの特長。「持ち歩いたほうがいいのか、持ち歩けなくてもいいのか、充電はどこにどういう端子をつければいいのか、など、とにかくゼロから設計と一緒に商品を検討して、同時並行でデザインをしていった」(杉山氏)と、新しいことづくめだった19Z1のデザインプロセスを説明した。

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