パナソニックは、2006年に発売したヘッドホン「RP-HTX7」(HTX7)を11年ぶりに「RP-HTX80B/HTX70」(HTX80B/HTX70)としてリニューアルした。ピアノ線材が見えるアイコニックなデザインや軽さなどの特徴はそのままに、Bluetoothによるワイヤレス再生、落ち着いたカラーバリエーションと今のトレンドを盛り込んだ内容へとブラッシュアップを図った。
新製品発売のタイミングがよりタイトになっているヘッドホン市場で、11年というロングランヒットを続けたHTX7をどう生まれ変わらせたのか。パナソニックアプライアンス社ホームエンターテイメント事業部商品企画部主務の松木朋美氏と、パナソニックコンシューマーマーケティングジャパン本部AVC商品部主務の新開祥之氏に開発の背景を聞いた。
HTX80Bは、Bluetooth対応のワイヤレスモデルで想定税別価格は9800円前後、HTX70は有線モデルで同6000円前後のいわゆる“お手頃”なヘッドホンモデルだ。現行機種HTX7は、グローバルで約100万台を販売した人気モデル。しかも11年という長きに渡り、第一線の人気を保ってきたロングセラーだ。
「リニューアルにあたり重視したのはお客様の声。11年間の蓄積を分析した結果、低域が弱い、長く装着していると頭が痛くなるという2つの意見が特に多く、ここを改善しようと思った」と松木氏は2つのポイントを挙げる。
HTX80B/HTX70は、新開発40mmドライバと「アコースティック・ベース・コントロール」を採用。ドライバ前後の空気の流れを最適化することで、低域の再現性を向上した。装着感については、クッション素材のグレードを上げ、より柔らかい装着感を確保。男女ともに検証を重ねることで、長時間着けていても痛くなりにくい側圧を導き出した。
重視したのは「女性でも使いやすいヘッドホン」だ。「HTX7は、ほかのヘッドホンに比べ、女性購入者率が比較的高いモデル。女性アーティストやタレントがSNSに使用していることを投稿してくれたこともあり、長い人気を保ってきた。新モデルもその路線を踏襲したいと思った」と松木氏は商品のターゲット層を見据える。
そのためHTX80Bのカラーバリエーションは20種類にもおよぶ試作品を用意。社内外で調査を重ね、「クールグレー」「キャメルベージュ」「マットブラック」「バーガンディレッド」の4色を選んだ。「HTX7は発色の良い赤や水色といったカラーリング展開をしていたが、プラスチックな質感とあいまって、少し幼い印象になってしまうと思った。今回はレザーで質感を上げ、カラーリングも落ち着いたものを重視。マット仕上げで、秋冬に似合うワントーンをテーマに選んだ」(松木氏)という。
ホワイトや水色など、現行モデルで採用したカラーリングや、ヘッドホンとして人気の高い色も最終選考まで残ったが、松木氏は「どうしても採用したかったのはキャメルベージュ。カラーバリエーションはデザイナーとともにとても悩んだが、ほかにはあまりないカラーリングで女性にも人気が出そうなカラーだと思った」と選出理由を話す。
「女性ターゲットも意識しているが、“女子過ぎない”というのが今回最も狙いたいターゲット。そう考えていくとユニセックスなデザインとカラーリングを突き詰めることが大事だった」(松木氏)という。この部分を突き詰めることで、「男性の方にも受けがいいデザインに仕上がった。現行モデルを使っている人も含めて、男性にもぜひ使ってほしい」(新開氏)と話す。
HTX7は、ユーザーのSNS投稿やラジオDJが話題にするなど、口コミ的に広がっていったことがロングラン人気を支えた要因の1つ。「新モデルも草の根的に広がるようなプロモーションを仕掛けていきたい」と松木氏はこれからの展開を話す。HTX7発売当時に比べるとヘッドホン市場はその規模とスピード、内容が大きく変化している。11年の時を経ても現行機種の後継という形を選んだ理由について松木氏は「今使ってくださっているお客様の声を分析すると、このモデルの満足度がかなり高いことがわかった。一方で低域、装着感といった部分の不満も見えてきたので、そこをどう改善するか、また市場環境からBluetooth化は必須だったため、ここをどう落とし込むのかがポイントだった」という。
HTX80B/HTX70は、11月3〜4日に東京・中野で開催された「秋のヘッドフォン祭」で展示。新開氏は「『使っています』という来場者の方も多く、現行機種と比較する方もいらっしゃった。(新製品を)待ってましたというお声もいただけたのはとてもうれしかった」とユーザーからのダイレクトな反応を話す。今回の新製品開発で、指標になったのは「顧客密着」という考え方。HTX80B/HTX70は、ユーザーの声から生まれた新モデルだ。
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