“攻め”の商品企画でヒットを生み出す--パナソニック「プライベート・ビエラ」の舞台裏

 パナソニックのポータブルテレビ「プライベート・ビエラ」が2012年の発売以来、隠れたヒットを続けている。登場当時、複数あった同様の商品はほとんどがなくなり、今や“一人勝ち”の状態。お風呂テレビとしてヒットし、40億円だった売上は、現在100億円を見据えるまでに成長した。「競合はタブレットやテレビそのもの」という環境の中で、プライベート・ビエラはどうやってヒットモデルを生み出し続けているのか。2.1chの高音質スピーカを備え「ひとり贅沢」をコンセプトにした新モデル「UN-19Z1」の開発背景とともに、パナソニック アプライアンス社 商品企画担当の増田陽一郎氏、設計担当の滝澤拓斗氏、デザイン担当の杉山勇樹氏、マーケティング担当の中村周二氏に話しを聞いた。


左から、パナソニックアプライアンス社 デザイン担当の杉山勇樹氏、商品企画担当の増田陽一郎氏、設計担当の滝澤拓斗氏

実はレコーダー「ディーガ」から生まれた商品企画

 プライベート・ビエラの企画がスタートしたのは2010年。2011年の地上アナログ停波を控え、「レコーダー事業は大幅に縮小すると見ていた。その時にレコーダー事業の次世代を担うコンセプト創出のためにスタートしたのがプライベート・ビエラ」と増田氏は開発のきっかけを話す。

 ポータブルテレビの位置付けだが、企画、開発を担っているのはレコーダー「ディーガ」などを手がける部署。2011年以降のディーガの需要をいかに伸ばしていくかという課題から生まれたのがプライベート・ビエラだった。

 第1号機は「ディーガ プラス」というネーミングで、HDDレコーダーにワイヤレスモニタをプラスしたモデルとして登場。ポイントはHDDレコーダーに録画した映像コンテンツをモニタに転送する、ワイヤレス動画伝送技術で、この部分にディーガで長年培ってきた動画圧縮技術を応用している。

 その後、10、15V型の防水モデルをお風呂テレビとして投入。2014年には商品のメインがモニタになっていることもあり、愛称名をプライベート・ビエラへと改めた。これと同時に、お風呂テレビだった商品コンセプトを「家じゅうどこでも」テレビに変更している。

 「お風呂テレビとして人気を獲得していたが、お風呂と謳ってしまうことで、自らマーケットを狭めてしまう懸念があった。お風呂はもちろん家中どこでも持ち運べるというメッセージに変更することで、より多くの人に届けたい思いがあった」と増田氏は、変更の理由を話す。

 ユーザー調査を実施すると、プライベート・ビエラとしながらも、家族共用で使われているケースが多く、お母さんが夕方キッチンで、帰宅したお父さんお風呂でと1台を家族全員で使っているケースが多かったとのこと。使用場所については、お風呂に加えて、リビングを挙げる人も多く、家族が集まりながらも、見ているコンテンツは違うという使い方が浮かび上がってきたという。

 その後、バッテリを搭載せず、アンテナ線のない部屋でもテレビが見られる「F」シリーズ、BDレコーダー機能をもたせた「TD」シリーズなど、ラインアップを拡充。シリーズごとに、違う用途とコンセプトを提案し、エポックメイキングなモデルを生み出している。

 その背景には「競合がいない」という市場環境がある。「現在、競合になっているのはタブレットなど別カテゴリの商品。その中で私たちの使命は、テレビとして満点の使い勝手を提供すること。プライベート・ビエラは電源を入れると同時にテレビが見られるし、チャンネル切り替えも1秒以内。もちろん映像も途切れない。ワイヤレスだからといってテレビの機能は一切犠牲にしていない。テレビのユーザー体験に限りなく近づけることを常に意識している」と増田氏は強みを明かす。

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