「Snapdragon」搭載Windows PCはユーザーの心を掴めるか - (page 2)

　だが、それがあだとなって、Microsoftが自社開発した「Surface」を除くと、Windows RT搭載の製品はほとんど出回らなかった。当のMicrosoftにしても、「Surface RT」の販売台数を過剰に見積もってしまったあげく、値下げに踏み切るしかなかった。他のPCベンダーやチップメーカーも、1社また1社とWindows RTに見切りをつけ、ついにはMicrosoftもWindows RT搭載のタブレットを2015年になって打ち切っている。

　「使い勝手や機能に制限があるものを作るときには、それを補える大きなメリットがなくてはならない」と、Moor Insights & StrategyのアナリストPatrick Moorhead氏は指摘している。Windows RT対応デバイスは、x86系の競合デバイスと比べて薄くも軽くもなかった。しかも、処理能力が劣り、使えるアプリケーションも数が限られていたのだ。

　「言ってみれば、悪いところ取りだった」（Moorhead氏）

　それでも、Microsoftと無線チップ大手のQualcommは、完全に諦めてはいなかったようだ。1年前、両社はQualcommのSnapdragonで「Windows 10」の動作を可能にすると発表した。Snapdragonはサムスンの「Galaxy S8」やGoogleの「Pixel 2」に採用されているのと同じチップだ。

　今回は、両社とも以前と同じ轍を踏まないようにしている。

　「われわれは皆、Windows RTで苦い経験をした。同じ失敗を繰り返すことは断じて許されない」。Qualcommで「Windows on Snapdragon」プロジェクトを率いる製品マネージャーのMiguel Nunes氏は、インタビューでこう答えている。

二度目の挑戦

　SnapdragonチップでWindows 10を動かすことに着手したとき、MicrosoftもQualcommも失敗を犯すことはできないと分かっていた。デバイスをもっとスマートフォンに近づけなければならない。そのためには、よりコンパクトな設計、長いバッテリ持続時間、無線接続、常時稼働という条件が必要だ。そして何より、機能制限版のWindowsを搭載するのは論外だった。

　「MicrosoftとQualcommが下した決断は、二流のWindowsシステムを絶対に採用しないということだった。普通のWindows。その点は譲れない」（Amon氏）

　HP、ASUS、Lenovoがこれに賛同し、Qualcommの「Snapdragon 835」プロセッサと「Snapdragon X16 LTE」モデムを搭載するデバイスの製造を開始した。HPから発表された「HP ENVY x2」は、12.3インチディスプレイを採用し、1回の充電で最大20時間連続動作ができるほか、「モダンスタンバイモード」であればおよそ30日間持続する。2018年春の発売で、最大8GバイトのRAMと、256Gバイトのストレージを搭載する予定だが、価格はまだ公表されていない。

HP ENVY x2
提供：Sarah Tew/CNET

　ASUSの「NovaGo」は、13.3インチのLEDバックライト付きフルHDディスプレイを搭載。動画でも22時間連続再生が可能で、バッテリはスタンバイモードで30日間持続する。販売価格は、4GバイトのRAMと64Gバイトのストレージを備えたモデルが599ドル（約6万8000円）、8GバイトのRAMと256Gバイトのストレージを備えたモデルが799ドル（約9万円）となる。

　Lenovoは、2018年1月の「CES 2018」で新製品を発表する予定だ。

　「これはフル機能のPCで、私の働き方を根本的に変えた」。MicrosoftのWindowsおよびデバイスグループ担当エグゼクティブバイスプレジデントのTerry Myerson氏は、Qualcommのサミットでこう述べた。同氏が使い始めたPCは、週に1度の充電で済む上に、瞬時に起動し、必要なときはいつでもインターネットに接続できるという。