リコー、得意の360度イメージング技術を不動産テックに活用--ビジネス事例をみる

 9月26日に開催されたイベント「CNET Japan Conference 2017 テクノロジが加速させる“新しい街・住まい”づくり~Real Estate Tech 2017~」では、2016年に引き続き、ICTが不動産ビジネスにとどまらず、都市や地域の機能およびサービスの効率化、高度化とどう関係するかについて、最新事例を使って解説した。

 不動産業界との関係が薄いように感じるリコーだが、実は得意技術を活用した新たな取り組みがある。リコー Smart Vision事業本部 DS事業センター所長の浅井貴浩氏による講演「『Vision-based IoT』- イメージングとAIで変える不動産ビジネス、街、社会」では、同社がチャレンジする不動産テック事業について語った。


リコーの不動産テックとは
リコー Smart Vision事業本部 DS事業センター所長の浅井貴浩氏
リコー Smart Vision事業本部 DS事業センター所長の浅井貴浩氏

イメージング技術を基点に不動産テックへ

 リコーに対し、CNET Japanの読者はどのような印象をお持ちだろうか。リコーの自社ブランドに加え、同社が買収して傘下におさめたペンタックス(旧社名は旭光学工業)ブランドで展開するカメラのメーカーと感じるかもしれない。または、複写機や複合機、ファクシミリなどのオフィス機器メーカーととらえる人もいるはずだ。いずれの認識も間違いではない。光学、画像処理といったイメージング技術を基点にして、消費者向けの製品からオフィス機器、工業機器、社会インフラまで、幅広く手がけている。

 そんなリコーだからこそ、金融分野におけるフィンテック(FinTech)、教育分野におけるエドテック(EdTech)、そして今回のイベントのテーマである不動産テック(Real Estate Tech:RETech)など、「X-Tech」と総称されるテクノロジによる変革を大きなビジネスチャンスととらえた。しかし、新たな分野にいきなり飛び込むことは、難しいし危険だ。浅井氏も「(単純に)テクノロジをいかして金融とか不動産に直接入っていくわけではない」と話す。

 そこでリコーが選んだのは、「Vision-based IoT」というコンセプトだ。得意とする光学と画像処理をいかしたイメージング技術に人工知能(AI)やクラウドといった技術を組み合わせて事業の幅を拡げる、というスタンスだ。

 以下では、テクノロジをビジネスに結びつけているリコーの取り組みを、具体的な事例で解説する。


事業拡大のコンセプトはVision-based IoT

「RICOH THETA」の360度イメージング技術を不動産テックへ

 リコーという企業を、世界初の360度全体を一度に撮影可能な民生用カメラ「RICOH THETA(リコー・シータ)」シリーズで意識するようになった人もいるだろう。登壇した浅井氏は、仕事は別に個人の楽しみでRICOH THETAを使ううちに、クラウドサービスと組み合わせれば面白い事業ができそうと考え、事業化に取り組んできたという。


360度イメージングを身近にしたRICOH THETA

 360度画像をオンライン公開して友人などに見せるサービスが存在しなかったRICOH THETA発売当時、リコーは専用サイト「theta360.com」を立ち上げ、誰でも気軽に360度画像をシェアできる環境を整えた。そうして販売が伸びるにつれ、不動産関係者からRICOH THETAを活用したいとの声が次第に届き出した。しかし、theta360.comはあくまでも消費者向けであり、営利目的での利用を規約で禁じていた。

 そこで、機能を拡充しつつ、不動産や建築、観光、飲食などさまざまな業種で360度画像を活用できるようサービスを整え、営利目的で利用可能とした法人向けサービス「THETA 360.biz」をスタートさせた。そもそもTHETAは、消費者向けの360度写真とビデオを楽しむためのカメラであり、他社を差別化できる技術的シーズに過ぎなかった。それが不動産業界のニーズと出会い、新事業として花開いたのだ。


不動産の内覧などに活用可能なTHETA 360.biz

 THETA 360.bizが活用可能なシーンは、不動産物件の内覧、ホテルや旅館、観光施設の案内、自動車販売時の内装紹介、工事現場の施行管理などが考えられる。そして、さらに発展させ、今後は街づくりや社会インフラ維持への活用も期待されるそうだ。

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