こうしてリコーは、画像処理技術、特に360度イメージング技術という強みを武器に、自社の不動産テックを深化させようと努めている。そんな取り組みの例として、浅井氏は3つの興味深い新技術を説明した。これら技術は、近い将来THETA 360.bizで使えるようになるかもしれない。
(1)360度リアルタイムビデオストリーミング360度画像の情報量は通常の写真に比べ多いものの、静止画という限界がある。そこで、リアルタイムに360度映像をストリーミングしつつ双方向コミュニケーションできるシステムを開発中。現在、在宅勤務や工場管理などでの活用を実験中で、360度ビデオ会議サービス「RICOH TAMAGO 360 VR Live」としても提供している。不動産販売で、遠隔地からのリアルタイム内覧、重要事項説明などにも使える可能性がある。
(2)3D復元360度カメラやステレオカメラで撮影した画像を処理し、3Dモデルデータを付与された360度画像を生成する技術。この画像とデータを使えば、写真で特定ポイント間の距離を測ることでき、例えば購入を考えている家具を部屋に置けるかどうかを画像から正確に判断する、といった応用サービスにつなげられる。
(3)マルチイメージングTHETAのような小型360度カメラの場合、撮影できる画像の解像度には制約がある。そのため、周囲全体を見回す目的だと扱いやすいが、画像の一部を拡大して詳しく確認する作業には向いていない。そこで開発した技術が、360度画像と高精細な画像をシームレスに重畳させるマルチイメージングだ。
360度画像のなかで注目されそうな部分をあらかじめ高精細カメラで撮影しておき、拡大したときだけ高精細画像を表示するように処理することで、360度画像を軽快に操作しつつ、詳しく見たい部分を鮮明に拡大する、といった操作が可能になる。不動産物件のバーチャル内見などで活用できるだろう。
リコーは、同社のイメージング技術をまちづくりや社会インフラ維持にも活用している。
前者については、研究施設「リコーテクノロジーセンター」のある海老名駅(神奈川県)西口地区でまちづくり事業に参画し、運営支援やサービス提供に取り組んだ。
そして後者は、まちづくりの先にある社会的課題の解決に向けた研究開発テーマと位置付け、イメージング技術とAIを組み合わせたインフラ向けモニタリング技術を開発している。浅井氏が紹介した研究開発事例は、産業用ステレオカメラを使った「道路モニタリング撮影システム」、被写界深度拡大カメラを使った「トンネルモニタリング撮影システム」、球殻ドローンを使った「橋梁モニタリング撮影システム」である。いずれも、リコーが得意とするイメージング技術をベースに、社会インフラの維持管理を効率化させる技術だ。
このようにリコーは、インフラが老朽化していく街を維持するために、予算や技術者の不足といった課題をICT活用で解決しようとしている。
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