世界有数のデジタル国家でSkypeの出身国でもあるエストニアから、また新たな企業がグローバル市場に挑もうとしている。2013年に誕生した「Taxify」という名のこのスタートアップは、UberやLyftのような配車サービスを東欧・アフリカを中心に展開中だ。
米国のUberや中国のDidi Chuxingが世界各地で覇権を争う中、また似たような企業が出てきたと感じる人もいるかもしれない。しかし、当時若干19歳だったCEOのMarkus Villig氏が立ち上げたTaxifyは、潤沢な資金を持つ大手配車サービス企業とは一味違う戦略に打って出た。
まず、Taxifyのアプリをインストールして気がつくのは、インターフェースがUberと酷似しているということだ。良く言えば、Uberをはじめとする他の配車サービスを使ったことがある人であれば、Taxifyのサービスにストレスを感じることはない。ピックアップ地点と目的地を入力すれば、アプリがおおよその金額を計算してくれるので、あとは実際に車両をリクエストするだけだ。
サインアップも個人情報とクレジットカード情報を入力するだけでよく、アプリをインストールしてから数分でサービスを使えるようになる。
ほとんどの配車アプリでは、サインアップ時に登録したクレジトカードが唯一の支払手段となるが、Taxifyでは現金での支払いも受け付けている。これはローンチ直後から東欧やアフリカといった新興市場を中心に拡大を続けてきた同社の戦略とも関係しているのだろう。
このようにユーザー側の状況を見てみると、Taxifyと既存サービスの間に大きな差があるようには思えないが、ドライバー側の状況を見てみると次第に違いが分かってくる。
Taxifyは自社で使っている車両管理システムをタクシー会社にも提供している。つまりタクシー会社は自分たちでシステムを開発せずとも、Taxifyユーザーに自社のサービスを提供できるのだ。しかも、システムの利用料はドライバー1人あたり月額12〜15ユーロと良心的。
また、同社はローカル企業とのパートナーシップにも力を入れている。たとえばUberは、2016年にハンガリーで新しく導入された規制により同国からの撤退を余儀なくされたが、それとほぼ同じタイミングで、Taxifyは現地のライセンスを持つタクシー会社とパートナーシップを結び、首都ブダペストへの進出を果たした。
上記のような戦略を採ることで、Taxifyは規制を遵守しながら収益を挙げられると同時に、各国でゼロからインフラを整えなくても済むため、コストを抑えられるのだ。
その証拠に、累計調達額が100億ドル以上におよぶUberは、2016年に28億ドルの赤字を計上したのに対し、これまでに200万ユーロ以下しか調達していないTaxifyはすでに黒字化を果たしたと言われている。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス