ここ最近のモビリティ業界は話題に事欠かない。配車サービスの草分け的存在Uberが世界中の市場を制圧するのかと思いきや、中国や東南アジアでは現地企業の返り討ちにあい、ロシアでも競合企業Yandexと合弁企業を設立することになった。
長距離移動に関しては、少し前に話題になった最高時速1200km超のハイパーループ構想をもとに、テスラモーターズCEOのイーロン・マスク氏率いるHyperloop Oneが最近リアルスケールのテスト走行を成功させ、韓国も類似交通手段の開発に着手すると発表している。
このように未来の交通手段に関し、さまざまなアイディアや事業が生まれているが、直近で私たちの生活にもっとも大きな影響を与えそうなサービスといえば、シェア自転車だ。
最近では中国のシェア自転車企業Mobikeが日本進出を決め、それからわずか数カ月後には同社のライバルにあたるofoもソフトバンクC&Sと共同で、特別な駐輪場がいらないドックレスシェア自転車事業を日本でスタートさせると発表。アジア以外でも世界中でシェア自転車サービスが誕生している。
まずシェア自転車の利点としては、誰かが運転手を務める必要がないため、24時間365日利用できるという点があげられる。さらに混み合った都市部など、車や大型の公共交通機関ではアクセスできないような場所も自転車であれば問題ない。燃料が不要なため環境にも優しく、運動不足の解消にも繋がりうる。
自転車の乗り捨てやGPS通信機能を逆手にとったプライバシー侵害の恐れなど、サービスの問題点も取り沙汰されているが、今後各地でサービスが普及していくうちに法整備(もしくは業界側の自主規制)が進み、上述のようなメリットを活かしたサービスが展開されていくことだろう。
ただ、いくらシェア自転車の数が増え、ルールが整備されたとしても、それに対応した街づくりや市民の意識改革なしでは、全体として十分にこのサービスのメリットを享受できなくなってしまう。
たとえば、駐輪エリアのスペースが限られていると「乗り捨て」ができるというシェア自転車の利点そのものが殺されてしまうし、自転車に安心して乗れるように自転車道が整備されていなければ利用者数は増えないだろう。さらには、本来自動車やバイクに比べれば安全なはずの自転車も、利用者が交通ルールを守らなければ新たなリスクを生むだけになってしまう。
そう考えると、ルール整備やサービスの普及とともに、受け入れ側となる各自治体はシェア自転車を有効活用できるような街づくりについて考え、市民も新たな環境に沿ったマナーを身に着けていかなければならないのだと気づく。つまり、シェア自転車という共有資産を有効活用しつつ、目的に応じた最適な交通手段を安全に利用できるような、スマートさとモビリティを兼ね備えた「スマートモバイルシティ」の構築こそが、今後の街づくりの大きな課題のひとつになるのではないだろうか。
以前ご紹介した通り、自転車大国オランダの首都アムステルダムは、シェア自転車サービスの急速な広まりを受けて、シェア自転車撤去という強硬策に出た。
しかし、現地市民の声に耳を傾けると、同サービスに対してポジティブな印象を持っている人も少なくない。さらにシェア自転車撤去に関する発表からしばらく経ち、9月の期限が迫った今も街中ではシェア自転車をよく見かける。また、国土が限られたオランダだからこそ、シェア自転車を普及させることで土地を有効活用できるのではないだろうか。
そもそも自転車が文化に根づいているオランダとシェア自転車サービスの相性はかなり良いように思える。自転車道は国中に広がり、電車も自転車持ち込みOK、街を歩けばトラムや自動車が自転車の通行を優先する様子をよく見かける。
オランダ北部フローニンゲンの一部では信号機にセンサーが取り付けられ、雨が降っているときは自転車道の信号が優先的に青に変わるようになっており、路面凍結による転倒を防ぐために自転車道にヒーターを埋め込むという試験的なプロジェクトまで実施されている。
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