logo

新しい資金調達「ICO」は日本に根付くか--PV偏重のメディアを変える「ALIS」の挑戦 - (page 2)

山川晶之 (編集部)2017年08月25日 08時00分
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 なお、ALISに似たプラットフォームとして米Steemというサービスがある。こちらもブロックチェーンを利用したソーシャルニュースプラットフォームで、質の高い記事を見つけた読者とその著者に独自のトークン「STEEM」が付与される。STEEMトークンは仮想通貨市場で流通しており、このプラットフォームに価値があると判断したユーザーが投資目的でトークンを購入することでさらに価値が増大し、ユーザーへの還元量が増えるエコシステムを構築している。こうした循環によりSTEEMトークンの評価額は300億円に達しているという。

 ところが、安氏によるとSteemのユーザー数は120万ほど(2カ月前では15万ユーザー程度)で、まだまだグロースしているとは言いがたい状況だ。これは、STEEMトークン以外にも、マイナーやコンテンツ制作者、キュレーターに与えられる「STEEM Power」、USドルとペッグされた「STEEMドル」の3種類が存在し、ユーザーから見るとそれぞれの用途が分かりづらくなっているためだ。そこでALISでは、1種類のトークンに簡略化し、「信頼できる著者と記事を見つけ出すユーザー」に軸足を置いたサービスとして展開する。安氏は、「報酬は行動の動機づけ。トークンを還元することで、信頼できる記事を見つけるためのインセンティブを自主的に組み込める」と語る。

「国内にICOプレーヤーがほぼ存在しない」ことが意味する危機的状況

 ALISでは、まず国内向けにサービスを展開し、アルゴリズムを成熟させたあとで海外展開を計画している。当初は日本向けのサービスとなるため、海外からの資金調達は難しいように思えるが、プラットフォーム自体の価値に投資する目的でトークンを購入する海外ユーザーは非常に多いという。こうした、効率的に外貨を調達できるスキームはICOならではのメリットと言える。

 ただし、日本でICOを実施しているプレーヤーはほとんど存在せず、これまでに、ICOで約18億ドルの資金が集まっているものの、日本からの調達はほぼゼロだという。むしろ、ICOにより日本円が海外に流出しており、安氏によると18億ドルのうちおおよそ15~20%が日本円と推定しているそうだ。「日本マネーが流出することで、海外のブロックチェーンベンダーが力を付ける一方、国内のブロックチェーン産業は衰退の一途をたどる。ブロックチェーン技術は破壊的であり、ソフトウェア産業で日本が致命的な打撃を受けてしまう」と危機感をあらわにしており、こうした状況がICO活用の動機になったという。

 ICOプレーヤーが国内から出現しない理由として、同氏は「ビジネス面」「技術面」「法律面」における不透明性を挙げた。ブロックチェーンを使ったビジネスの理解度は日本ではまだ浅く、特にマウントゴックス事件により、仮想通貨に対する不信感が国内に定着していたことも足かせの一つになっていた。マウントゴックス事件では、取引所自体に問題があり、ビットコインには問題は無かったものの、問題発覚から数年はエンジニア同士でも話題にしづらかったと石井氏は語る。また、水澤氏は「日本人は新しい技術への感度は高いが、事業として絡むと急に動きが鈍くなる。製造業ではリードしていた日本だが、ネット、スマートフォンに続いて、ブロックチェーンでも出遅れるわけにはいかない」と主張する。

 法律面も複雑だ。2017年4月1日に改正資金決済法が施行されたが、当初はICO実施時に事業者登録が必要と法解釈する意見もあり、莫大な登録資金を用意する必要があったほか、海外に法人を作ってまでICOを実施するスタートアップも多くはなかった。ただし、関係省庁や弁護士と密にコミュニケーションする過程で、ICOに限り事業者登録は必要ではないとALISチームは解釈した。理由として、ユーザーはイーサリアムを使ってALISトークンを購入するが、ICOを実施する時点のトークンは仮想通貨ではなく、手に入れたALISトークンの売買もできない。これはデジタルアセットをEC上で販売しているのと同義であり、海外・国内事業者問わず、特定商取引法の範囲内で実施できるためだとしている。


ICOに関する法整備は道半ばの状態だという

 水澤氏は、「関係省庁や弁護士とハードに議論しないと見えてこない部分で、ICO自体はグレーゾーンには変わりないため法違反に問われるリスクもある。日本でICOが普及しないのは、グレーゾーンに踏み切れない現状がある」という。今後も定期的に関係省庁とのコミュニケーションを重ね、ALISを先行事例として法が整備される状況にしたいという。「関係省庁とのリスクヘッジはコミュニケーション頻度」と同氏は語った。

 これにより、国内法人だけで展開するスタートアップでもICO実施のハードルが下がったことになる。ALISでは、ICOの先行例として展開し、国内のスタートアップや投資家に対してICOの優位性をアピールしていくという。なお、ALIS自体はすでに香港法人を立ち上げてICOの準備を進めていたため、このまま香港法人としてICOを実施し、日本法人がサービスを展開する予定であるという。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]