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新しい資金調達「ICO」は日本に根付くか--PV偏重のメディアを変える「ALIS」の挑戦 - (page 3)

山川晶之 (編集部)2017年08月25日 08時00分
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信頼を得るにはすべてをさらけだすこと

 短時間かつ効率的に資金を調達できるICOだが、日本ではほぼ前例が無いため準備には相当苦労したようだ。ICOには、ブロックチェーンの整備と配布するトークン、サービスの詳細を記したホワイトペーパー、世界中の法律知識、トークンを上場させるための取引所とのネゴシエーションなどが必要となる。ALISでは、エンジニアの石井氏が長年ブロックチェーンを研究しており十分な知見を持っていたこと、弁護士や関係省庁と密にコミュニケーションをはかったこともあり、なんとか3カ月で準備を進めることができたという。

 また、一番のキモとなるのが、出資するユーザーが多く集まるICOのコミュニティだ。一般的には、TwitterやSlackで形成することが多く、ALISでも専用のSlackコミュニティを用意している。ただし、ICOに関する法整備がまだ進んでいないことから、コミュニティによって法律の解釈が大きく異なってくるという。ICOに関する是非の議論に発展することも多く、リスクマネジメントを取りながらコミュニケーションを図っている。水澤氏は、「昔からの仮想通貨ユーザーに信頼してもらうには、コミュニティとのコミュニケーションが重要」という。


「Slack」上の「ALIS」専用コミュニティ。日本時間の深夜2時に、海外から「おはよう!」とメッセージが飛んでくるのも日常茶飯事だという

 特にICOでは、架空のプロジェクトで資金を集める詐欺案件が横行し始めており、ユーザーも敏感になっている。「みなさんにきちんと納得して応援してもらえるよう、また誤った解釈にならないよう、一人一人とTwitter上でやり取りするほか、ユーザーをランチに誘って直接コミュニケーションを図るなど、草の根活動を通じて不安感を払拭している」と水澤氏は語る。また、ALISの法人設立から現在に至るまでのすべてのタスクを、プロジェクト管理ツール「Trello」を通じて公開しており、どのメンバーがどういったタスクに従事しているかを“恥ずかしくなるレベル”で全世界に発信している。これは、信頼を得るだけでなく、今後ICOを通じた資金調達を考える国内スタートアップに向けてノウハウを公開する狙いもある。


会社設立から現在に至るまでのすべてのタスクを「Trello」上で公開しているという

 セキュリティもICOでは重要な要素となる。ICO用のプログラムは、ライブラリも揃っていることから数日で準備できるものの、プログラム制作の20倍以上の時間をテストに費やしているという。透明性を高めるため、ソースコードもGitHubに公開している。また、ALISトークンを販売(トークンセールと呼ぶ)するための専用サイトの準備も入念だ。これは、トークンセール用のサイトがハッキングされ、攻撃者が異なる送金アドレスを表示することで、プロジェクトに資金が集まらず、攻撃者側に流れてしまったケースが存在するためだ。

 こうした取り組みのおかげか、コミュニケーションが希薄になりがちなICOプロジェクトが多い中、日本人らしさ、日本のおもてなしを提供することで、少しずつ信頼を集めることができたと安氏は語る。

ICOは日本のビジネスになにをもたらすか

 法整備や準備などハードルが高いように見えるICOだが、確実なメリットも存在する。安氏は、「ICOを活用することで世界に向けて戦うチャンスが手に入る。仮想通貨は国境を簡単に超えることができ、世界を対象としたサービスを低いハードルで組み立てることができる。自分たちのアイデアが認められれば、もっと挑戦できる」という。

 また、「ICOはブロックチェーンの利点が集約されている。非中央集権型であり、手数料などのマージンも発生しない。上場や資金調達のために必要な書類をそろえることなく、過去の活動や取り組んでいるプロジェクトをすべて公開することでユーザーに判断してもらえる。新しい会社の立ち上げ方として広まるだろう」としている。

 ALISのトークンセールは9月1日11時からスタートする予定。AISトークンの購入にはイーサリアムが必要だ。2018年4月にはベータ版を提供する予定で、2018年10月の正式ローンチを計画している。また安氏は、今回の取り組みをきっかけに、ICOを活用し、日本から世界の金融を変えるFinTechサービスがさらに登場することに期待を寄せた。

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